指導変革の軌跡 福井県立美方高校「取り組みの効果的な導入と改善」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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地域の熱い期待が教師の意識を支える

 教師の意欲を支える重要な要素の一つは、何といっても地域の期待だ。地域の熱望によって設立された同校には、一口1000円で参加できる「美方高校後援会」がある。会員は現在約4000人。会員数は減少傾向だが、地域的には敦賀市や小浜市などにまで広がっている。改革当時に発刊が始まった後援会会報誌『泉ン原(いずんばら)』(年1回発行)は、08年度で10号を迎えた。「地域あっての美方高校」という意識が、教師の間に浸透しているのである。
 地域連携はここ数年で新しい展開が見られた。5年前に導入した「先輩と語る会」は、10人ほどの卒業生を招き、高校時代の思い出や現在の仕事などを在校生に語ってもらう講演会だ。同校では卒業30年目に同窓会を行うため、その機会を利用して開いている。山口先生は、「卒業生は生徒にとって先輩というだけでなく、同級生の保護者であることもよくあります。より身近な存在として、言葉の一つひとつが生徒の心に響いています」と話す。
 05年度に始まった中高一貫教育は、普通科3クラスのうち2クラスを連携クラスとする。「スムーズに連携できたのも、中学校との交流事業を継続的に行ってきたからです」と、上塚先生は評価する。08年度には中高一貫教育の1期生が高1生となった。当面の課題は1期生が確実に実績を出すことだが、今のところ学力面は例年より厳しい状況にある。
 進路指導部の村古崇徳先生は、「学力検査を受けていないことが原因と考えられます。今後は、数学の課外補習の充実、英語の新規教材の導入等の改善策を検討しています」と総括する。試行錯誤を重ねながら、既に課題解決に向けた一歩を踏み出しているところは同校らしいといえる。
 ここ6年で、美方高校はさまざまな取り組みを導入・改善してきた。一方、廃止・縮小した取り組みは一つもない。教師の多忙感は増しているが、当面取り組みを縮小する予定はない。生徒にとって必要な取り組みばかりという認識があるからだ。上塚先生は、「増えた取り組みは、すべて生徒を対象としたものです。生徒の喜ぶ顔を見れば忙しさも報われます」と話す。
 すべては生徒のため――。その思いこそが、教師の意欲を支える源泉なのだろう。

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