指導変革の軌跡 千葉県立千葉東高校
VIEW21[高校版] 新しい学校再生のパートナー
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補習計画を前倒しで提示し学校を安心して学べる場に

 面談などの「教師から生徒に近付いていく取り組み」を充実させる一方、「生徒から教師に近付いてもらう仕掛け」も強化した。
 その一つは補習の組織化だ。以前は放課後や夏期の補習は個々の教師に任せていたため、時間が重なったり内容が重複したりと効率的ではなかった。そこで、進路指導部を中心に教師が討議し、時間や内容を調整する組織化を進めた。 特に、生徒に好評なのは夏期補習だ。組織化前は夏期補習の計画が出そろうのは7月で、5月ごろにある予備校の夏期講習の募集が終了してから発表していた。そこで、予備校の募集終了前に夏期補習の時間割を作成して生徒に配付したところ、例年に比べ、参加する生徒が格段に増えた。生徒からは「予備校よりも学校の方が安心して学習できる」という意見が多く聞かれたという。進路希望を把握し、生徒のことを考えた指導が、学校への信頼を築いたのだ。
 大学入試がピークの2月にも、多くの3年生が学校で自習をするようになった。「学習環境に満足し、高校が自分の居場所と考える生徒が増えた表れだと思います」と、松本先生は喜ぶ。
 04年度に始めた「ポジティブ制度」の成果も、生徒と学校の距離が縮まったことを表している。学校で行う進路指導の活動に大学生になってからも協力できるという卒業生に、あらかじめ登録してもらうシステムだ。依頼する活動は、在校生へのアドバイスや大学見学の際の案内役など。8割以上の卒業生が登録に快く応じ、総数は700人を超えた。生徒が愛校心を持って卒業したことがうかがえる。
 「先日、卒業生が大学に入ってからの友人との会話を報告してくれました。平日の放課後はもちろん土曜日も長期休業中も学校でずっと勉強していたことを話したら、『そんなに学校にいたなんて』と不思議がられたそうです。そうした報告からも、取り組みが着実に成果に結び付いていると感じました」と、鈴木先生は話す。
 一連の指導の強化によって、同校はかつての進学実績を取り戻した。更なる一歩を踏み出すための課題は1、2年生への指導だ。受験に向けて2年生の夏以降の指導が重要であると認識しているが、現在は夏休みの大学見学の報告書をまとめさせる程度の活動しか行えていない。この時期から学ぶ意欲を高めさせ、3年生への指導にスムーズにつなげたい考えだ。
 「教師の間には『いかにして生徒の潜在能力を引き出すか』という意識が確実に根付きました。今後は『受験があるから勉強する』という生徒の意識を変えることに重点を移し、教科指導をより充実させると共に、進路、学年、教科の連携を広げたいと思います」と、鈴木先生は意欲を語った。

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