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「生徒のため」。その言葉をいつも突き付けられた日々でした。「午後7時までは生徒との時間、9時までは同僚との時間、そのあとが自分の時間」。これも岡﨑先生の名言の一つです。結局、1日は生徒のため、学校のためにあるというわけです。実際、話をしにきた生徒に岡﨑先生が「忙しいからあとで」と言ったことは、一度もありません。それほど先生はいつも生徒との時間を一番に考えていました。
そんな姿を近くで見るうちに、私自身も確かに変わり始めました。授業中、生徒の表情を見て「どうもうまく教えられていない」と感じたとき、「ごめん、うまく説明できてないね。もう1回説明し直すから」とすっと言えるようになったのです。曖昧な説明のまま進んでしまって、生徒に不利益を被らせるわけにはいかない。素直にそう考え、授業を仕切り直せるようになりました。
岡﨑先生は2年後の92年に異動され、更に5年後、校長として甲陵高校に戻ってこられました。先生は「私たちは甲陵ファミリーだ」と全校集会で訴えました。先生から、「思った通りにやりなさい」と3学年の学年主任を任された私も、学年団を家族としてまとめたいと思いました。そこで、学年主任時代の岡﨑先生のある取り組みをやってみることにしたのです。
それは毎朝、学年団の先生に「その日の終礼で生徒に話してほしいこと」を伝えることです。ファミリーである3学年の生徒全員に、学年団として毎日メッセージを送るのです。学年主任とはいえ、一番若い私の申し出に「なぜ?」という顔をされる先生もいらっしゃいました。それでも、学習のこと、進路のこと、人生のことと、私はいま生徒に伝えたいことをメモにして、先生方に毎日配りました。すると、先生方は次第に私の言葉に自分なりの思いを加え、肉付けをして生徒に伝えてくださるようになったのです。
ファミリーに少しは近づけただろうか…手応えを感じた私ですが、あるとき、出張から帰ってきた岡﨑先生に生徒が「お帰りなさい」と挨拶する場面を目撃しました。校長に生徒がお帰りなさいなんて、本当に岡﨑先生は甲陵ファミリーのお父さんだな…私は驚き、そして「岡﨑先生にはまだまだかなわない」と改めて実感しました。
いま自分がいる学校は家族。だから最高の学校にしよう。教師としての生き方を教えてくれた岡﨑先生は、私にとって大切なオヤジなのです。 |
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