|
|
|
|
|
|
「自立」を準備し「個性」を伸ばすのが高校 |
|
私は「自立」については、中学校が「基礎づくりの時期」なのに対して、高校は「準備の時期」であり、また「個性」については、中学校が「探る時期」に対して、高校は「伸ばす時期」だと考えます。
まずは「自立」から述べましょう。中学校のカリキュラムは、国語、数学、英語といった普通科目によって構成されています。中学校は義務教育ですから、「国民として、自立して生きていけるようになるために、最低限これだけは身に付けてほしい」という基礎となる科目を中学校時代に学ぶわけです。
一方、高校教育も、普通科の場合は、普通科目の学習が中心となります。ただし中学校までとは、意味合いが異なります。中学校の普通科目が「国民としての基礎」を身に付けるものだとすれば、高校の普通科目は、専門教育を受けるための準備教育、すなわち「専門への基礎」の役割を果たしています。「専門教育を受ける準備段階として、これだけの幅と量の知識や思考力は、身に付けておいてほしい科目」として設定されているのが、高校の普通科目です。
2009年3月、文部科学省から発表された高校の新学習指導要領では、国語、数学、外国語で共通必履修科目が設けられることが打ち出されました。しかし私自身は、更に理科と地歴・公民も含めた6教科で、共通必履修科目を設けてもよかったと思っています。
生徒の実態が高校によって多様化し、一律の指導が難しくなっているということはよくわかります。けれども、「専門教育を受けるための準備教育として、どの高校でもこれだけはきちんと生徒に身に付けさせてほしい」というものがある。私はそう考えています。もちろん、その生徒が志望する大学の入試科目には、関係ない科目も含まれることになるでしょう。
「大学入試に合格することを目的とした教育」ではなくて、「専門教育の準備段階としての教育」であることを、私たちはより意識しなければならないと思うのです。
ちなみに、今回の高校の新課程では、全般的に教える内容の量が増えています。また中学校の新課程でも、現行課程では削除されていた学習内容が復活したり、上の学年で教えている内容が下の学年に降りるなど、学習内容の充実が図られています。これにより中学校・高校段階で確かな「基礎基本」を身に付けた生徒が、大学へと進学してくるようになることが期待できます。
ただし、大学・大学院での教育・研究や、社会に出てから求められる能力を考えたとき、必要になるのは「基礎基本」だけではありません。新課程では「言語活動の充実」や「活用の重視」が掲げられていますが、これらの取り組みを通じて、どれだけ授業の中で生徒の「考える力」を高めることができるかが非常に重要になってくると思います。大学や社会で本当に求められるのは、未知の課題に直面したときに、持っている知識を活用して自分で考えをめぐらせながら、課題解決のための答えを導き出せる力だからです。
これまで各科目の授業では、知識の習得を強化するために応用問題に取り組ませるといった「習得のための活用」については行ってきました。しかし今後は、知識を習得したら、それを問題解決のために活用できる力を、授業の中で生徒に身に付けさせる必要が出てきます。
こうした授業は、一部の先生方を除いて、従来ほとんど取り組まれてきませんでした。そのため、最初は戸惑うことが多いでしょう。教師間、学校間、校種間を越えて、ノウハウを蓄積していくことが不可欠になると思います。 |
|
|
|
|