指導変革の軌跡 栃木県立栃木高校「進路検討会」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「築いてきた教師の顔がちらついた」葛藤と重圧との戦い

 一連の改革に対する教師の評価は高い。多くの教師が「変えてよかった」「担任支援の面が色濃く出ている」と前向きな感想を述べている。取り組みの副産物として、担任と進路指導部のクラス担当との関係が一段と密接になった。
 「かつては『すり合わせ』でひざ詰めの検討を行っていましたが、今はそのころよりも、担任と進路指導部の距離が近づいたような気がします。決められた枠の中で話し合うのではなく、必要に応じて声をかけ合ったり、資料の確認をしたりする中で、生徒の進路実現に向けて力を合わせようという意識が、より強くなってきているのではないでしょうか」(殿岡先生)
 08年度からは、センター試験の翌週に、3学年と進路指導部が連携して、小論文指導や面接指導を組織的・機動的に行うようになったのも、そうした教師の連帯意識の高まりを表している。
 改革はひとまず成功したが、伝統的な取り組みにメスを入れることに、抵抗感はなかったのだろうか。改革を主導した渡辺先生に聞いた。
 「進路指導委員会は本校の進路指導の中核であり、長い時間をかけて精密にシステム化してきました。これに手を加えることを考えたとき、制度を築き上げてきた先生たちの顔を思い浮かべたことは確かです。実際に制度を改変することによって効果は上がるのか、精度は維持できるのか、かえって事務量が増えるのではないかという不安もありました。それでも着手したのは、一つは進路指導部長の若杉先生が賛同してくれたこと、もう一つは取り組みを振り返るきっかけを与えてくれる若手教師の存在です。素朴に投げかけられた疑問によって気づかされることも多くありました。先生方の支えがあってこそ、大胆な改変を断行できたと思います」
 若手教師の熱意は、先輩教師の心にも届いている。10年前、同校の進路指導部長として、第一線で進路指導を指揮してきた稲葉実校長は、現在の改革をどう見るのだろうか。
 「伝統校といえど、時代と共に変わるのは当然のことです。かつては、進路指導部のリーダーシップが突出していて学年団の発言力が弱く、組織としての活力に欠けていた面がありました。私自身、進路指導部長時代に心がけていたのは、担任団との情報共有です。現在の改革につながる道筋をつける役目を果たせたと思っています。ただ、現在のシステムが学校文化として定着していくかどうかは、今後の成果次第です。時代に合わなくなれば、再び手が加えられるでしょう。そうした不断の見直しこそが、組織の活力につながっていくのではないでしょうか」

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