大きな節目は、高1前期に取り組む「ライフデザイン~『25年後の私』を考える」だ(図2)。生徒一人ひとりが、自ら設定したテーマに基づいて25年後までのキャリアデザインを描くレポート課題である。テーマには「地球温暖化」「iPS細胞とES細胞」「ゆとり教育」など、現代社会の課題が取り上げられている。
「生徒の25年後といえば、結婚、出産を経験し、子育ても一段落して、再び社会に参加しやすくなる年齢です。しかし、一度仕事の第一線から離れると、復帰しても補助的な役割に甘んじなければならない場合がほとんど。出産・育児を経験した女性が社会の中心的な存在になるのは難しい現状がある。また、少子化で就業人口が減少するこれからの時代は、女性の社会参加が一層求められます。本人が満足できる社会参加を果たすためには、高校生の時点で25年後の自分をイメージさせることが大切ではないでしょうか」(松田校長)
信念を持ったキャリア教育の成果の一つは、理系進学者の増加だ。仕事に直結した理系分野で学び、25年後の社会復帰を視野に入れたライフプランを高校生が描いているのである。学部分野別の合格者の割合について、06年度と07年度で比較したところ、工学系11人→38人、理学系6人→13人、看護・保健・医療系16人→30人と増えている。系統立ったキャリア教育は受験への向き合い方にも変化を及ぼしている。キャリア教育部長の井上一雄先生は、一連の取り組みの成果を次のように実感している。
「卒業生による合格体験談のスピーチでは、ある卒業生が在校生に向かって『受験勉強を通して人間的に成長できた』と語りかけてくれました。自分の人生の課題を真正面から受け止め、それを克服することによって成長できたと実感していると話してくれたのです。これで、私たちのキャリア教育の方向性は間違っていないと確信できました」
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