入試問題研究を始めて以来、授業の質が変わってきていると、進路指導部長の大崎芳樹先生は感じている。
「何より、授業が進めやすくなりました。あらかじめ入試問題を解いておけば、授業中に『ここは○年度の○○大入試に出た』『○○大を目指すなら、この問題は解けるようにしておきたい』というように、より具体的にアドバイスができます。指導が具体的になればなるほど、生徒は日々の授業の大切さを実感できるようになる。ひいては、教師への信頼感につながっていくと思います」
教師の「手作り」だからこそ、生徒に伝わるものがあると、大森教頭は指摘する。
「導入前は『過去問題集なら市販されている』と言う先生もいましたが、教師の手作りだからこそ生徒を引き付ける面があります。生徒は、私たち教師が入試問題を実際に解いて、分析していると知っています。教師が頑張っている、勉強している姿を見せることによって、生徒のやる気も高まるのです」
実際、授業に意欲的に取り組む生徒が増え、授業後の質問が増えているという。定期考査の直前にしか質問に来る生徒がいなかった以前と比べて、大きな変化である。
指導力向上・授業改善に伴い、職員室の雰囲気も変わった。普段の会話で、入試問題について教師同士が話し合う光景が見られるようになったという。
更に、職員室や廊下で生徒と面談を行う姿が増えたのも、教師の意識の高まりを反映してのことだろう。同校では数年前からスタディーサポートを導入しているが、結果が出ると担任は必ず面談を行い、具体的なデータに基づいて、生徒個々人に合った行動指針を示す。「経験による指導」だけでなく、「客観的な裏付けに基づく指導」が加わったのだ。近年の私立大への合格実績を見ると、06年度入試で479人だったのが、09年度に623人と増えた。教師のきめ細かな指導が、生徒の進路実現にも影響している様子がうかがえる。
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