地方公立高校の挑戦
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 5/5 前ページ

地域の理解を得るために市民を対象に学校公開

 地域の学校に対する不信感や良くないイメージを少しでもぬぐい去ろうと、地域に対する広報活動にも力を注ぐ。03年度には生徒による年少者への読み聞かせや清掃活動を始め、04年度は学校を紹介する冊子やホームページを作った。佐藤校長自らが地域に出て、直接、住民に理解と協力を訴えることもあった。
 06年度には地域住民を対象に学校公開を実施。学校公開と言えば自校を会場にするのが一般的だが、同校は佐賀市の公共施設を会場にし、生徒会の活動発表や公開授業などを行った。学校の目標や課題を、学区内だけでなく、広く市民に知ってもらおうとしたのだ。案内や運営は生徒が務め、頑張る姿をアピール。好評のうちに終了し、地域の理解と協力を得るきっかけになった。
 「多くの方から好意的な感想や称賛が寄せられました。これが、生徒への大きな『承認』になりました。地域の学校を見る目は確実に変わり、『荒れた学校』から『地域の誇りの学校』へと意識は少しずつ変化していったようです。積極的にかかわろうとしてくださる方が乗数効果的に増えていきました」(空閑先生)
 08年度は、県民ホールを1週間借りきって、生徒全員が描いた絵を展示する「絵で見る元気あふれる学校展」を開催。絵の下には、教師や保護者が書いた、展示作品に対して頑張りをたたえるメッセージを添えた。「承認」の大切さについて、地域に発信するという趣旨もあった。
 作品の搬入や展示、会期中の受付などは、保護者が担当した。
 「保護者への協力依頼時には、活動のねらいをきちんと説明しました。『活動が生徒にとってどのような効果があるのか』が理解できれば積極的にかかわってくれます。受付担当の保護者は、来場者に『応援メッセージ』を書いてもらうための説明をいとわずにしてくれました」(佐藤校長)
 今、取り組むのは、学区の小学校及び地域との連携だ。小学6年生を中学校に招いて行う部活動体験、中学校教師が小学校に出向いて行う出前授業、地域行事への参加などを通して、学区ぐるみで「開発的生徒指導」を展開し、子どもを育てていこうとしている。
 「地域全体の活性化には、『地域の子どもはみんなの宝』という意識で育てていかなければなりません。小中連携を核にしながら、地域や家庭で子どもに『出番』『役割』を与え、『承認』するという流れをつくりたいと考えています」(佐藤校長)
 地域と学校の協力によって、子どもの「出番・役割・承認」の場を広げ、自己肯定感を高めていく──。かつて「生徒指導困難校」と呼ばれた金泉中学校の取り組みは、高校現場においても参考になるのではないか。


  PAGE 5/5 前ページ