指導変革の軌跡 宮崎県立高原高校
VIEW21[高校版] 先生方とともに考える 新しい進路指導のパートナー
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将来の目標を持つことが学校生活への意欲を高める

 ただ、いかに教師が手厚い指導をしても、学びに向かおうとしない生徒がいることは確かだ。
 「意欲の低い生徒は、能力がないのではなく、将来の目標が持てないために、向上心がわいてこないのだと思います。福祉科の生徒は、『介護福祉士の国家資格の取得』という目標があるので、学校生活に対する意欲を維持しやすい。しかし、漠然と就職を希望している生徒は、何を目標として学校生活を送ればいいのか探しあぐねているのが現状です。求人票次第という不安定な進路選択を強いられる中で、生徒の意欲をいかに高めていくかは、依然として大きな課題です」(尾辻先生)
 同校が「一人一目標」をスローガンとしているのも、目標を持たせることで充実した高校生活を送って欲しいという思いからである。「家庭学習にきちんと取り組む」「資格を取る」「ワープロをマスターする」など、生徒一人ひとりが1年間の目標を掲げる。
 また、毎年行う卒業生による進路講演会や3年生の進路体験発表会も生徒に目標を持たせる工夫の一つだ。08年度からは『わだち』という冊子にまとめて配布し、いつでも生徒が目を通すことができるようにした(コラム参照)。
 同校は、11年度に宮崎県立小林秀峰高校との再編統合が決まっている。あと2年間で改革の成果を上げ、今後へとつなげていきたいという。  
 「小さな試みであっても、教師全員が力を合わせれば大きな力になります。本校がなくなるのはとても寂しい気がしています。しかし、それを乗り越えて一丸となった教師の心意気を、新しい学校にも伝えていきたい。今後4年間の取り組みの中で本校が存在したという証を残し、惜しまれる学校として幕を閉じたいと思っています」(上池教頭)
3年生と卒業生の体験談『わだち』
 高原高校では、就職した卒業生による「進路講演会」を毎年12月に実施する。更に、2月に就職活動を終えた3年生による「進路体験発表会」も行われる。『わだち』は、それらの講演内容をまとめた冊子だ。先輩の体験談を通して、1、2年生に学校生活を見直して欲しいという願いが込められている。過酷な就職活動をくぐりぬけてきた先輩の声は、実感がこもっている。「資格取得や部活動も大事だけれども、学ぶことも大切。先生の注意がうるさいと感じることもあると思いますが、それは私たちのことを思って言ってくれていることに気付く時が必ず来ます」「自分はどのような職業に就きたいのか、どんな夢があるのか、先生や家族とじっくり話し合ってください」「遅刻や欠席を繰り返して、いざという時に苦しむのは自分自身。勉強も自分の進路を広げるために頑張るべきです」
 そうした先輩のアドバイスを、在校生はしっかり受けとめているようだ。「目標を立てずに毎日を過ごしていたら、3年間を無駄にしてしまうと気付きました」「勉強も資格取得も、取り組んだ分だけ自分に返ってくると分かりました」
 講演会や発表会は、各家庭で進路について話し合うきっかけにもなっているという。
『わだち』

*今回のテーマに関連する過去の記事:

→ 2009年9月号

指導変革の軌跡:千葉県立姉崎高校 「学校再生」


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