指導変革の軌跡 愛知県・私立名城大学附属高校「導入期指導」
愛知県・私立名城大学附属高校

愛知県・私立名城大学附属高校

◎1926年、名古屋高等理工科講習所として開設。48年、名古屋文理高校として開校し、51年に現校名に改称。理系教育を重視し、2004年度にサイエンス・パートナーシップ・プログラムに、06年度にはスーパーサイエンスハイスクールに選ばれた。

設立●1926(大正15)年

形態●全日制/普通科・総合学科/共学

生徒数●1学年約640人(内特別進学クラス約120人)

09年度入試合格実績(特進クラスのみ。現浪計)●国公立大は、東京大、東京工業大、静岡大、名古屋大、名古屋工業大、豊橋技術科学大、愛知県立大、名古屋市立大などに計47人が合格。私立大は、青山学院大、慶應義塾大、明治大、早稲田大、南山大、名城大、同志社大、立命館大、関西学院大などに延べ281人が合格。

住所●〒453-0031 愛知県名古屋市中村区新富町1-3-16

TEL●052-481-7436

WEB PAGE●http://www.
meijo-h.ed.jp/


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指導変革の軌跡134


愛知県・私立名城大学附属高校「導入期指導」

入学時からの徹底支援で生徒の不安をぬぐい
学習への意欲を高める

変革のステップ
背景(STEP1)
実践(STEP2)
成果(STEP3)
◎量を与える指導により進学実績は向上したが、実績が上がるにつれ学校に顔が向かない生徒が増加
◎補習や課題を削減する一方、スタディサポートや模試を活用して、教師に対する生徒の信頼感を高め、学習習慣の確立を図る
◎欠席や遅刻が減り、教師と生徒の距離が近くなる。学習習慣も徐々に定着し始めている

第1志望に届かなかった挫折感が生徒の心を閉ざす

 2007年の春、名城大学附属高校の山村信一先生は、かつてない違和感を覚えていた。物理科担当の山村先生は、2年生から生徒にかかわることが多い。その年も2年生の担任となり、特別進学クラス(以下、特進クラス)の指導に当たった。しかし、例年よりも生徒の反応が鈍く感じたのだ。「2年生になって初めて生徒の前に現れたのだから、すんなり受け入れられないのは当然だ。良い授業さえしていれば、生徒の顔は自ずと教師に向き、遅れも取り戻せるはず」。そう信じてきた。
 ところが、その年の生徒は違っていた。いくら授業を丁寧にしても、顔が教師の方に向かない。なぜそれをすべきかを丁寧に説明しても、理解を示さない生徒が少なからずいた。
 空回りしたまま卒業していったが、その間、違和感はくすぶり続けた。原因はどこにあるのか。山村先生が出した結論は、1年生の頃から教師とのコミュニケーションが必ずしも十分ではなかったこと、そして、愛知県内における同校の位置付けに要因があるというものだった。
 名城大学附属高校が特進クラスを設置したのは23年前。男女共学とした1999年度から実績が上向き始め、09年度の大学入試で初めて現役で東京大合格者が輩出。高校入試では特進クラスだけで2000人以上の志願者を集めるまでになった。
 しかし、愛知県は伝統的に公立高校に対する生徒や保護者の信頼が厚い。同校の進学実績が向上しても、公立高校の「有力併願校」という位置付けは変わらなかった。生徒の大半は、第1志望への合格を果たせなかった挫折感を抱いて進学する「不本意入学者」だった。
 そこへ、特進クラス伝統の「量を与える指導」が追い打ちをかける。7時限後の放課後補習、土曜日の隔週補習や長期休暇中の集中補習、そしてほぼ毎日ある大量の課題。理想と現実の差に折り合いをつけられない生徒が増えていった。進路指導部長の梁川津吉先生は次のように話す。
 「進学実績が上がるにつれ、入学者の学力も高くなっていきました。その中で、それまでと同じようにひたすら努力を強いる指導を続けた結果、高校生活を窮屈に感じる生徒が増えたのではないでしょうか。本校が更に飛躍するためには、今まで以上に生徒と教師の距離を近づけ、厚い信頼関係を築くことが必要だと考えました」
 09年4月、山村先生は1学年主任となり、若手教師を中心とする学年団が発足。学習量だけに頼らない「生徒と教師がつながる指導」を目指した改革が始まった。

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