指導変革の軌跡 鳥取県立鳥取中央育英高校「小中高連携」
鳥取県立鳥取中央育英高校

鳥取県立鳥取中央育英高校

◎2003年度、鳥取県立由良育英高校(1906年設立)と鳥取県立赤碕高校が統合再編して開校。「克己」を校訓とし文武両道を目指す。全国大会優勝の実績を持つ陸上競技部や水球部、全国高等学校総合文化祭で11年連続最優秀賞受賞の新聞部などがある。

設立●2003(平成15)年

形態●全日制・単位制/
普通科(普通コース・体育コース)/共学

生徒数●1学年約540人

09年度入試合格実績(現浪計)●国公立大は、島根大、鳥取大、山口大、香川大、愛媛大、鹿屋体育大、横浜市立大、下関市立大などに計12人が合格。私立大は、酪農学園大、青山学院大、専修大、日本大、明治大、立教大、龍谷大、近畿大、鳥取環境大、広島経済大などに延べ54人が合格。

住所●〒689-2295 鳥取県東伯郡北栄町由良宿291-1

TEL●0858-37-3211

WEB PAGE●http://www.
torikyo.ed.jp/ikuei-h/

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指導変革の軌跡135


鳥取県立鳥取中央育英高校「小中高連携」

学校種を越えた連携が生徒の学ぶ意欲を生み
教師の意識改革を促す

変革のステップ
背景(STEP1)
実践(STEP2)
成果(STEP3)
◎隣接する中学校からの提案により、小中高の連携事業を開始。生徒の基礎学力向上と教師の意識改革を目指す
◎12年間の「家庭学習の手引き」作成などで、子どもの学ぶ力を育て、小中高合同の研究授業を通して、教師が刺激し合う
◎小中高の相互理解が深まると共に、教師の意識改革が進む。中学校教師の意見も取り入れた学び直し教材を独自に作成

小中高の連携事業により積年の課題克服に挑む

 「『向ヶ丘』に立つ学校同士、一緒に出来ることはないでしょうか」。鳥取県立鳥取中央育英高校の浪花(なにわ)良孝校長のもとに、隣接する北栄町立大栄中学校の中川昇前校長から連携の打診があったのは、2006年末のことだ。北栄町の向ヶ丘には大栄中学校、北栄町立大栄小学校、そして同校が、数百メートルの距離で位置する。大栄小学校のほぼ全員が大栄中学校に進学し、大栄中学校から同校に進学する者も毎年数十人に上る。しかしそれまで、部活動などで若干の交流がある他は、踏み込んだ連携はなかった。
 大栄中学校にとって、生徒の学習意欲をいかに高めるかは積年の課題だった。中学生は高校受験を意識するが、入学後の学びまではイメージ出来ていない。高校での学びがどのようなものか、そのために必要な力は何かを知ることで、中学校での学びや行事にもっと前向きに取り組むようになるのではないかとの期待があった。
 鳥取中央育英高校にとっても、中学校との連携は飛躍のチャンスだった。同校は03年に、鳥取県立由良育英(ゆらいくえい)高校と鳥取県立赤碕(あかさき)高校が統合再編して開校したが、当時、大きな課題があった。再編3年目に赴任した前田幸男先生は次のように振り返る。
 「赴任当初、私が持っていたイメージに比べ、生徒に学ぶ意欲や態度、学習習慣が不足していると感じました。教師が互いに再編前の各校の文化や校風を尊重して気遣うあまり、学校の方向性を定めきれていないようでした」
 生徒の学力低下も深刻だった。再編から年を経るごとに成績下位層が拡大し、文章を読み取れない、文法が理解できない、定着まで時間がかかるという生徒が増えていった。
 「出来ることを模索してみましょう」。連携の打診に、浪花校長はそう即答した。中高連携によって基礎学力が定着した学習意欲の高い生徒を育成できれば、大学入試においても地域の期待に応えられるだろうと考えた。ただし、浪花校長の思いはそれだけではなかった。
 「進学実績の向上もさることながら、中学校の先生方との交流を通して、本校の教師の意識を外に向けられると思いました。教師一人ひとりが、小中高、そして大学へと続く指導の連続性を意識し、授業改善や指導力向上に取り組むことによって、学校全体の教育力を高められればと考えたのです」

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