ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
実践事例
 
   7/8 前へ次へ


■実践事例2
東京都 北区立赤羽小学校の取り組み
文科省の委嘱を機に学校評価を実施。
職員会議も外部評価者に公開
プロジェクトチームに年代別代表を加える
 赤羽小学校が自己評価・点検の取り組みを始めたのは、2002年度、文部科学省の委嘱を受けたのがきっかけ。
 赴任したばかりの岩津泰彦校長は、まず校内に、「評価システムプロジェクトチーム」をつくった。評価項目の作成などをする作業部隊だ。メンバーは、校長、教頭、教務主任、生活指導主任、研究主任のほか、年代別代表(20代、30代、40代代表をそれぞれ1人ずつ)の合計8人。年代別代表を加えたのは、若い先生の声を反映したかったから。それが結果的にはプロジェクトチームの垣根を低くし、今年度から年代別代表を「学年代表」に変えても、若い先生が入ってくるようになった。
 評価は、教員による「内部評価」、学校評議員と教育モニターによる「外部評価」で行うが、これに、保護者の学校診断、4~6年の児童による「学校生活アンケート」を加えて、多面的評価をねらった。
 外部評価者のうち、学校評議員8人は区教委委嘱の学識経験者などで、教育モニター7人は校長の委嘱。医師、授業支援ボランティアなど、日ごろ学校に出入りし、子どもたちに接している人を選んだ。
 同校の評価の特色の一つが、教員による内部評価を二つに分けたこと。一つは、保護者や児童の評価とのズレをみることができるように、外部評価と同じ項目にした(内部評価A)。もう一つは、校長の「学校経営方針・経営計画」から項目を設定(内部評価B=表1)。“校長先生の通信簿”ともいえるものだ。
赤羽小学校内部評価Bの項目
▲表1 赤羽小学校内部評価Bの項目(抜粋)。内部評価Aは、外部評価項目と同じもの

 教育モニターの評価を、学校評議員との違いを出すため、評価基準は示さず、自由記述だけにした点にも特徴がある。
 評価項目について岩津校長は、「外部評価項目の設定は難しかった」と漏らす。プロジェクトチームでたたき台をつくり、評価者に示したが、「あいさつの仕方」など細かい内容だと評価項目は膨大になるし、「心豊かな子どもに育っているか」といった大まかな質問だと、判断が難しい。
 「最終的には、月並みな質問になったと反省しています。今後、評価項目をしぼり込み、答えやすい設問をつくることが課題です」(岩津校長)
 一方、若い世代の代表を加えた成果はあった。
 「たたき台は学校教育目標に関する項目から始まっていましたが、それを見た20代の先生に、『いきなりそんな堅い内容からきくと、保護者はいやになっちゃいますよ』と言われて、はっとしましたね。保護者用は並べ替え、まず、子どものようすからきくようにしました」(岩津校長)
職員会議を外部評価者に公開
 具体的な評価活動は、表2の通りである。外部評価者と教員とが交流の機会をなるべく持つようにし、学校の情報もできるだけ流すようにした。内部評価の結果も評議員、モニターに提示した。
 「どんどん学校においでください」と言っても、機会をつくらなければ足を運んでもらえない。外部評価者には、行事に必ず声をかけることはもちろん、年2回、半日以上学校で過ごしてもらう機会を設けた。給食の試食に始まり、5時間目の授業を参観し、職員会議まで傍聴してもらった。
 「職員会議を見てもらったことは、教員の意識改革に役立ちました。最初は『職員会議まで公開するのか』と反発がありましたが、プライバシーを扱うような議題のときを避けるようにすれば、どんどん公開してよいという雰囲気になってきました」(岩津校長)
教員、児童、保護者のズレに注目
 同校が学校評価で力点を置いていることの一つは、教員、児童、保護者の3者の意識のズレに注目すること。そのために、3者が同じ項目で評価した。例えば、「わかりやすい授業」に対しては、教員全員が「そう思う+ややそう思う」と答えたが、保護者は学年によって違うものの80%前後、児童は76%と差が出てきた。ほかの項目でも、おおむね、教員は自身の活動には高い評価を下しているが、保護者、児童からは厳しい目で見られていることがわかった。
写真1 少人数だよりの作成
▲写真1 学校評価の結果、4分の1の子どもが授業を理解していないことがわかり、改善策として実施した算数の少人数授業(5年生)。2学級を習熟度別の3グループに分け、担任と加配の算数専科も合わせて3人で指導に当たる。少人数授業についての保護者の理解を深めるため、「少人数だより」を発行している

 こうした結果から、校内研修の重点項目に指導法の工夫をあげ、「わかりやすい授業の実現をめざす」ということになった。現在、算数や国語で少人数授業を実施するなどの改善策をとり、さらに国語・算数の研究指定を受けるべく区教委に名乗りを上げている。
 学校評価を取り入れた成果は見え始めているのだろうか。
 「先生方が保護者・地域に対してしっかり説明するようになり、子どもたちへの気配りもこれまで以上にこまやかにできるようになりました。保護者から、『いいことを始めましたね』とお褒めの言葉もいただきました」
 「ですが、教員の意識改革は口で言うほど簡単ではありません。ときには『外圧』も必要です。それがなかったら、始められなかったかもしれません。でも、外に対して開かれた学校になるためには、内に対してもオープンでなければと私は思っています。校長会の内容など、随時職員会で報告しています」(岩津校長)
評価システム
▲表2 赤羽小学校の評価システム。これに教育課程編成など、学校運営も連動している

■赤羽小学校データ■
岩津泰彦校長
▲岩津泰彦校長
 赤羽小学校は、人口約31万7千人の北区で、4番目、1876(明治9)年に開校した歴史と伝統を誇る学校。言語難聴学級があることもあって、学区外からの通学者が半数を占めるようになり、学校行事への参加の仕方など、学区域の保護者との間に温度差が出てきているのが課題。外国人の子どもも多く、生活習慣の指導など、配慮を必要としている。
〒115-0045 東京都北区赤羽1-24-6
TEL 03-3901-8510 FAX 03-3901-8457 校長/岩津泰彦先生
児童数/403人、学級数/20(知的障害学級3、言難通級学級5含む)
 
このページの先頭へもどる
   7/8 前へ次へ
 
本誌掲載の記事、写真の無断複写、複製、および転載を禁じます。
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.