応用的な学力を伸ばすには、「学びの基礎力」と「生きる力」が重要 |
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教科の成績の上位層のみを、「学びの基礎力」と「生きる力」のスコアの高低で比較したものが図4です(注4)。 |
▲図4 応用的学力ほど、「学びの基礎力」と「生きる力」の影響が大きい
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注4 図4の基本問題は通過率100%、応用問題は通過率75%の児童を比較したもの。
基本問題の上位層では、「学びの基礎力」「生きる力」ともに高いスコアの子と、両方ともに低いスコアの子の人数比は同じでした。一方、応用問題の上位層では、両方とも高いスコアの子のほうが両方とも低い子よりも、人数比で有意に高いことがわかりました。
このことは、知識・理解を中心とした基本的な問題では、「学びの基礎力」や「生きる力」にはあまり左右されずに、いわゆる暗記や反復学習によっても一定の成績を収められることを示します。しかし、思考・判断力や、自分の意見を文章で表すような応用的な学力を測る問題では、「学びの基礎力」や「生きる力」がバランスよく身についていないと、よい成績を収められないことを示しています。
私たちはこれを「学びの伸びしろ」という言い方をしています。つまり、「学びの基礎力」や「生きる力」がある子どもは、潜在的な力が高くなっていて、応用的な力を問う問題になると、それが発揮されるのではないかと考えました。
図5は、2人の子どもの学力プロフィールです。 |
▲図5 「教科学力」「生きる力」「学びの基礎力」のスコアをレーダーチャートにまとめた 学力プロフィール。AさんとBさんの学力プロフィールを比べると、教科学力スコアは ほぼ同じだが、学力の背景にある生きる力や学びの基礎力に、差があることがわかる (グラフ中の100の目盛は全体平均を示す)
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教科学力を見れば、AさんBさんともほとんど変わりません。ところが、学力の背景にある「生きる力」や「学びの基礎力」は、Bさんのほうが全体にスコアが高く、バランスがとれています。つまり、「学びの伸びしろ」はBさんのほうが大きいと考えられます。
今後、中学・高校と進んで難しい内容を学ぶことになっても、Bさんは現在の学力を維持できるでしょうし、さらに上がっていく可能性もあります。個に応じた指導のためには、表に表れた教科学力だけでなく、「学びの伸びしろ」にも目を留めていく必要があるのではないでしょうか。 |