ベネッセ教育総合研究所
太宰府市立学業院中学校
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IT活用のポイント(1)
情報は与えすぎないことが大切
 石井先生は授業を次のように振り返った。
 「子どもの『おや?』『なぜだろう?』という気づきや疑問から授業が始まり、子どもの『調べたい』『知りたい』という興味・関心をずっと引っ張っていけるのが、よい授業だと考えています。今回の授業は子どもが調べたい国と調べたいことを決められたという点ではほぼ目標は達成できたといえますが、うまくいかなかった部分もあります」
 石井先生がうまくいかなかった部分としてあげるのは、今回使用した「@発見島Movie」の映像にナレーションやテロップなどが入っていることで子どもたちに情報を与えすぎてしまったことだ。導入部分では映像だけで、国の名前や特徴を考えさせたほうがよかったが、すでにテロップが含まれている映像を利用したため、子どもの思考を止めてしまう部分があったと石井先生は反省する。
 「授業の際は情報を与えすぎないことに注意を払っています。例えば、今回の授業で、調べたい国と調べたいことを書かせました。アメリカ、中国、韓国についてはナレーションが入っていない映像でしたが、ブラジルの映像だけは、ナレーションなどの情報が入っていました。アメリカの農作業の映像を見て『これはいったいなんだろう?』という疑問を持った子がいました。そこでこちらからちょっとしたヒントを与えると、自分なりに『なぜだろう?』と知りたいことをふくらませていって『小麦の輸出入』という知りたいテーマを設定できていました」
 中身がすぐわかったり、説明しすぎたりすると、子どもの集中力はすぐに途切れてしまう。欠落した情報によって、子どもに「おや?」と思わせるような揺さぶりをかけ、知りたい気持ちをかきたてることが大事だ。そのために、授業の目的に応じてIT教材が選べる状況にあること、先生自身がそれを正しく選択できることが大切と石井先生は指摘する。
IT活用のポイント(2)
学習フォローが必要な子に効果的
 今回はプリントに気づいたこと、調べたこと、考えたことを書かせた。子どもから集めたプリントを見て、石井先生は、普段、課題を持つことが難しいと思っていた児童が、課題設定までたどり着いていたことに気がついたという。
 「その理由の一つは、本時の学習のめあてが、『調べたい国を一つ決める』というシンプルなものだったことがあります。しかし、映像によって視覚的な投げかけができたことも大きいと思います。映像で示されるもののなかに自分の身近な生活との結びつきが見つけられたため、言葉にできたんでしょうね。学力の高い子はIT教材がなくても目標を達成できますが、学力的に若干のフォローが必要な子には映像で見せることが高い効果を上げることもあります」
 すべての子に映像が効果的とは限らない。個々の子どもがどのようにすればわかるか、答えは一つではない。したがって、IT教材の特性を踏まえたうえで、目的・場面に応じてさまざまなツールを使い分ける必要がある。
IT活用のポイント(3)
興味・関心を持たせるだけでなく学力向上につなげるために
 また、IT教材は目を引くので、子どもの興味・関心を喚起できる。興味・関心を高めることは大事なポイントだが、次に考えていかなければならないのは、子どもたちの理解を助ける使い方である。
 「子どもたちがIT教材を使って本当に学力が高まるのか、学力を保障できるかということは、しっかり考える必要があると思います。絶対評価Cの子どもを、映像コンテンツを使った授業によってBに上げることができたという結果がもたらされなければ、IT活用も意味がありません」
 では、どうすべきなのか。石井先生は次のように語る。
 「教師が子どもの思考を支援していくなかで、『ここでつまずくから、こうしたツールを』ということを強く意識して教材研究をしていくことが必要になります。調べたいけど情報がないという場面にデータベース型の教材、視覚的にとらえることが難しい概念についてはシミュレーション型教材で理解を助けるといった具合ですね。IT教材にはいろいろな強みがありますから、それを授業でいかに有効な使い方をしていくかを考え、『わかる』ことにつなげていくことが大切です」


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