ベネッセ教育総合研究所
特集 教室を超えて生きる国語力
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教師自身の国語力も欠かせない
 国語力向上が必要なのは児童ばかりではない。教師の国語力も重要だ。
  「何より教師が同じ言葉、ありきたりの言葉ばかり使ってはいけません。教師自身が本をたくさん読み、表現をみがいていくことも必要です。また、児童に発表させるのなら、教師自身が発表できる力があることが、まず求められます」(平田校長)
  例えば研究協議会などで決まったテーマについて協議する場合、最初の3分間で各教師に自分の考えを書いてまとめさせたうえで発表させている。「書く」時間を取ることで、協議会の最初から意見がよく出るようになる。こうした試みを通じて、教師自身も目的意識をもって聞き、話し、読み、書くようになる。
  また、宮園小学校の教師は、児童への日常の声かけにも気を配っている。例えば指示を出すときも「~しなさい」というだけではなく、「~になるように~しなさい」など、理由や根拠を具体的に示すようにしている。こうした試みを通じて、児童自身が行動するときに、自分から「~だから~する」「~のために~する」と目的や背景を論理的に考えられるようになるという。
  「意識しているからといって、いつもうまくできるわけではありません。でも、できなかったときに『できなかった』という自覚を教師自身が持てるかどうかで、児童への次の指導が確実に変わってきます」(曽根先生)
  こうした教師の指導力向上は、平田校長が何よりも重視していることだ。校長は学校全体の授業力を高めるために、授業を積極的に観察し、各教師にアドバイスしている。校長自身による模範授業を見せることもある。
  「これからの管理職には授業力が必要。実際にどうすればいいかのモデルを示せなければ、先生たちを指導できないと思います」(平田校長)
  2年間にわたる国語科の研究を終え、児童の日常の言葉遣いや授業での発言には自信や力強さが感じられるようになってきた。相手意識や目的意識などの言語意識が、伝え合う場で育ってきた証拠だ。宮園小ではこの言語意識を、児童が「書く」場面や「読む」場面でも常に意識できるように働きかけるなど、05年度も応用範囲を広げながら、国語力の育成に取り組んでいく計画である。
  常に目の前の児童をしっかり見つめ、足りない点、つけたい力を見定めながら、一つひとつの課題を着実に乗り越えてきた宮園小。国語力が教科のためだけではなく、生活のなかで「生きて働く」力となる過程を教師と児童は確実に歩んでいる。


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