ベネッセ教育総合研究所
特集 教室を超えて生きる国語力
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「本を読む」、「本で調べる」に慣れる
 朝暘第一小学校では学校図書館に「読者センター」と「学習情報センター」双方の機能を持たせることで、子どもが読書に親しみ、資料を積極的に活用して学習できる環境づくりを学校全体で行っている。そのなかから、ポイントとなる点をピックアップした。
1 図書館に親しむしかけ
 案内表示や書架分類板を子どもの目線でわかりやすく配置し、児童が探している本をすぐに見つけられるようにしている。さらに、1学期に、図書館の使い方のオリエンテーションを各学年で行い、2学期には図書館内の本を使って正解を見つける「図書館クイズ」を実施するなどして、図書館を使いこなす力をつけさせている。特に1年生は、毎日のように図書館に連れてきて、本を借りて読むことが生活の一部になるよう、入学時からの習慣づけを徹底している。
2 本に興味をもたせる『読み聞かせ」
 地域や保護者ボランティアなどによる読み聞かせも盛んだ。1年生には週1回、2年生には隔週、3年生には月2回、4・5年生には月1回、6年生には学期に1~3回程度、10分間の朝自習の時間を利用した読み聞かせが行われる。その際、取り上げた本はどこに行けば借りられるかを伝えたり、関連した本を紹介したりして、児童の読書意欲を刺激している。また年に3回、異学年同士の読み聞かせを通して本に親しんでもらう取り組みも行われている。
3 教師や児童による本の紹介
 校内には、本を紹介する掲示物が実に多い。図書館前や各学年の廊下には、教師や児童のお勧め本や6年生が卒業時に選んだ「これまで一番面白かった本」の紹介文がイラストと一緒に掲示されている。これらの資料は過去のものもあわせてファイリングし、図書館で閲覧できるようにしている(写真2)。本紹介を通して、教師と児童、児童同士の交流が活発に行われているのも、朝暘第一小学校の大きな特徴である。
写真
▲写真2 教師や児童の本の紹介は低・中・高学年ごとに
ファイリングして図書館に置かれ、いつでも閲覧できる
4 授業で使える本や資料のリスト化
  調べ学習を行ううえで役立つのが、授業で使える本をリストアップし、教科ごとに、各学年、各単元の参考図書がひと目でわかるようにした「単元別参考図書目録」のファイルだ(図2)。図書以外にも地域資料や各機関の刊行物など、学習に役立つ資料は取り寄せて、「インフォメーションファイル」として分類・整備している。これらは、児童の調べ学習はもちろん、教師が指導計画を立てる際にも役立つ。
図表
▲図2 「単元別参考図書目録」の例
教科ごとに、各学年、各単元の参考図書がひと目で
わかるようにした「単元別参考図書図録」。
児童の調べ学習はもちろん、 教師が指導計画を たてる際にも役立つ
 調べ学習の際、「図書館で調べなさい」と促したはいいが、参考資料が少なくて児童が十分に活用できないという経験をした教師は少なくないだろう。しかし、こうしたファイルがあれば、万が一資料が少ない場合、使う資料が分散するようにグループごとにテーマを設定するなどの配慮が可能だ。また、必要性の高いテーマの本が少なければ、それを優先的に補充していくこともできる。
5 学校司書・司書教諭・図書主任の存在
 こうした取り組みのすべてを学級担任が行うのは難しい。そこで大きな力となるのが、図書館活用教育担当として図書館運営に当たっている学校司書(鶴岡市の専任職員)と司書教諭(副教務主任兼任)、図書主任(学級担任の教員)の存在だ。朝暘第一小学校では、30年以上も前から学校司書が常駐しており、図書館の整備や本のリスト化など児童や教師の図書館活用を支援している。これに加えて、03年度からは学級担任を持たない司書教諭が置かれ、図書館を使う授業にTTとしてかかわったり、担任と打ち合わせをして調べ学習に必要な図書や資料を事前に準備している。また、図書主任は学級担任としての利点を生かし、子どもたちや先生たちの声を直に聞いて図書館運営に反映させている。朝暘第一小の図書館は、この三者の協力体制によって、学習活動のインフラとして機能しているのだ。


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