特集 「考える力」を引き出す授業―理数教科からのアプローチ―

京都市立桃山東小学校

◎開校は1969年。桃山丘陵南東部の高台に位置し、周囲を竹林に囲まれた静かな環境のなかにある。03~04年度には、文部科学省指定の学力向上フロンティアスクール(算数科)として、「創造力を培う確かな授業づくり」を研究。また、「総合的な学習の時間」は「創造」と位置づけ、起業家精神を養うなど、ユニークな取り組みも進めてきた。05年度は、算数と国語を軸に、思考力を育成する活発な校内研究を進めている。

中島繁雄

校長 中島繁雄

児童数 368人
学級数 14学級
所在地 〒612-8011 京都市伏見区桃山町伊庭12
TEL 075-621-1411
FAX 075-621-1422
URL http://www.edu.city.kyoto.jp/hp/
momoyamahigashi-s/

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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実践事例<理数を超えて>
京都府
京都市立桃山東小学校

各教科の授業に「推論」を取り入れ考える力を育てる

既習事項を活用して論理的な思考を巡らせ、結論を導き出す。そうした「推論」の要素を各教科の授業に取り入れ思考力の育成を目指しているのが桃山東小学校だ。桃山東小学校の実践内容から「考えさせる」授業の方法を探る。

「推論」を通して思考力を育てる試み

 桃山東小学校の中島繁雄校長は、公教育における授業の“効率化”の進行に懸念を抱いていた。効率よく知識を詰め込むために、授業では考えさせる時間が不十分なままに解法を与え、機械的な練習問題を繰り返す。これでは、子どもたちの「考える力」を削いでしまっているのではないか。
 「低学年の児童は、『なぜだろう』といった気持ちを強く持ちます。こうした疑問は学習意欲を引き出し、『考える力』を育てますが、高学年になるほど学習に対して受け身になり、疑問も抱かなくなります。そうした現状を改善するには、まずは授業の抜本的な改革が必要だと考えました」
 そこで中島校長は、算数の授業に「推論」の要素を取り入れる実践を開始した。推論とは「ある事実をもとにして、未知の事柄を推し量り、論じること」だ。そうした思考方法を育てるために、授業では解き方や答えを教える前に、まずは既習知識や既習の考え方をもとに自力で考えさせることを中島校長は提唱した。さらに、推論の力を高めるために、教師は日々の指導のなかで、帰納的思考(全体から共通性を見出して結論立てていく考え方)、類推的思考(既習事項から類推していく考え方)の二つの思考法を培う場を意識的に仕組んでいくことを目標に掲げた。
 中島校長が授業改革の起点として算数を選んだのには、理由がある。
 「算数の問題は答えが明確で、曖昧な要素がないので、一つの答えに向かって筋道を立てて考えるには最適の教科です。他教科、例えば国語では心情面などが絡み、推論の焦点がボケてしまうこともあります」
 中島校長は、教師の間に授業改革の意識を浸透させるため、2004年度に、すべての教師に年4回の算数の公開授業を課した。互いの授業を見学し合うことで研究を進めようという考えだ。そして、05年度には、算数を中心に全教科で「推論」を促すための要素を意図的に取り入れ始めた。だが、教師間には経験や授業力の差があることから、まずは研究主任に授業を公開させ、授業展開のイメージを共有化させた。
 ここで確認されたのは、45分授業のなかですべての子どもがねらいに即した思考活動を行えるよう、ただ漠然と既習事項の想起を促すだけではなく、既習事項のどの部分を想起することが必要なのかを吟味しなければならないということだ。同校では、「問題解決を促進するのに役立つ基礎・基本となる知識や考え方」を「考える足場(または考える種)」と呼び、授業の導入で、クラス全員で共有させることにした(図1)。この「考える足場」が、導入問題や主問題を解決する際の基盤となる。

図1

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