ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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国語の取り組みが成果につながっていった
 こうした一連の取り組みによって、先生方は確かな手ごたえを感じている。
 「算数のテストでは、問題意図の取り違えがなくなってきました。算数に限らず、問題文を理解できるようになってきました。国語力の強化が他の教科への波及効果として現れたといえます。」(服部先生)
 漢字トレーニングの成果については、敦賀西小では、「漢字力だめし」というテストを行っているが、02年度から03年度の通過率は中学年以上で上がっている。(図3)
図3
■図3 漢字力だめしの通過率
厳しい採点基準の中、どの学年も7割以上の通過率があり、前年に比較しての伸びも確認されている。漢字が苦手だった児童の底上げができたと、先生方は感じており、継続の結果であることを確信している。
 また、もう一つの課題の表現力でもよい面が出てきている。子どもたちの話し方がはっきりしてきたと服部成男教頭がいう。
 石亀校長も、子どもたちの詠んだ俳句、作文、壁新聞にその成果を認識している。
 「言葉が生き生き、光ってきています。保護者の皆さんからも『家族読書で子どもとのコミュニケーションの機会がふえた』と、よい感想をいただいています」
 敦賀西小では、今後も国語の強化を中心にして、総合的な学力を向上させていく取り組みを継続していこうとしている。
 
敦賀市の「学力向上に向けた取り組み」
●敦賀っ子の潜在的能力を引き出す
敦賀市教育委員会は、魅力ある学校づくりをめざして、「敦賀っ子教育推進プラン」を2002年に定めた。21世紀を担う子どもたちの育成とあわせて、「敦賀に誇りを持てる子ども」を育てていくことも課題と考えている。
子どもの実態把握については、教科の「知識・理解」が中心となっており、「関心」「意欲」「態度」などの課題を充分に把握できていなかった。そのため、生活意識の調査も含めより正確に実態を把握できる「学力調査」を04年より実施している。
(1)より客観的な子どもの姿を把握
敦賀の子どもたちの教科学力は全国平均以上だが、「学びの基礎力」や「生きる力」は充分でなく、遠慮深く自尊感情が低いという結果が出た。潜在的な能力は持っているのに、充分発揮されない、言わば「眠れる獅子」の状態であることがわかった。
また、保護者(家庭)の意識と学校の考え方の間にズレがあった。子どもの潜在能力を引き出すには、学校と保護者が協力した取り組みが必要なこともわかった。
(2)プランとデータにより積み上がる形を実現
新任から3~4年で転任するために、学校内での指導ノウハウが積み上がりにくい現状があり、教師の意欲向上支援や管理職のリーダーシップ向上を教育委員会が主導して行う必要があった。そのために市全体でのプランを作り、学力調査の客観的なデータで課題を捉えることで指導が積み上がる形を実現した。
(3)積極的になる仕掛け
「敦賀市教育課題モデル校事業」は、毎年各学校からの自主的な立候補・プレゼンで決定され、指定校には予算の措置を行うなど、教育委員会が積極的な学校活動を後押ししている。
今後の課題は、教育に関する情報・データを公開し、保護者・地域から広く提言がもらえるように連携を強めていくことと捉えている。
 
「学力調査」の活用と工夫
(1)先生方の校内研究会での指導方法の研究
2004年度、第1回の校内研究会を開き、研究授業を行った。研究推進委員会、研究推進チームを設置し、原案の検討、調整を行っている。このことで、成績データの分析、情報の共有化、授業の進めかた、発問の方法、わかりやすい板書の方法などが、先生方の間で統一された。
(2)他学年のデータを自学年に読みかえる
学力調査は5年生だけの実施となったが、5年生との比較で、他学年にもあてはまることを考える。具体的には、3年生は5年生と「ことばが少ない」「単語でしか話せない」などの特徴の共通性から類推し、3年生への取り組みを考えるようにしている。
(3)保護者に説明の資料として利用
保護者のかかわりを促進するために、学力調査のデータを利用して説明を行う。データの裏付けがあることで自信を持って説明できる。


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