ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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運営のポイントはシステム化と合理化
 2学期制、教科担任制と毎年のように新しい実践に取り組んできた弘道小学校。学校運営上の秘訣を川上校長は、
 「先生に指示をする際には一切丸投げはしないよう心がけている」
という。運営上のノウハウなど、校長自らがある程度お膳立てをし、「これならできる」という見通しがついて初めて、先生たちに投げかける。校長・教頭の役割と、教員の役割をはっきり線引きしているのだ。しかも、「この通りにやりなさい」とは言わない。「あなただったらどうしますか」と問いかけ、運営上の詳細はすべて教員が自己決定している。
 「教員の重要な仕事は授業をすることですから、授業ができなくなるようなことになってはいけないんですよ」(川上校長)
 教員の時間を確保するために職員会議は2ヵ月に1回に減らした。朝会はなくして朝学習の時間「チャレンジタイム」をつくった。校務分掌も委員会方式をやめ、一人一分掌にすれば、話し合いの時間をとらなくてすむ。会議は、必要な人だけが集まってするようにした。
 「勤務で拘束する時間は週40時間しかないわけですから、このうちの27時間を授業にあて、あとの13時間を教材研究や校務運営にあてるようにしています。一人一分掌制がさらに機能すれば来年はもっと合理化できますよ。合理化とシステム化が学校運営だと思っていますから」と語る川上校長。校内のあらゆる場にこの言葉どおりの実践が生かされている。
 
 
足立区の「学力向上に向けた取り組み」
足立区教育委員会では、平成16年度から「21世紀を担う児童・生徒の生きる力をはぐくむ教育」を推進するため、小中学校長会の協力を得て、「学力向上検討委員会」を立ち上げた。平成16年2月に出した報告書の中では、学力を「学習指導要領に示された基礎的・基本的内容を習得し、さらにそれらを活用する力」とし、学力を構成する要素として学ぶ学力、思考力、判断力、表現力、問題解決能力、知識・理解、学び方、課題発見能力などを挙げている。
また、学識経験者、小中学校長代表、PTA会長代表、教育委員会職員などを構成メンバーとする「学力向上推進会議」を設け、「学力向上検討委員会」からの報告をもとに足立区立学校の児童・生徒の学力向上のための具体的な施策を提案している。その提案の1つが、「足立区学力向上に関する総合調査」だ。平成16年度、足立区では「プレ調査」の位置づけで実施した。
足立区の学力向上に関する総合調査の考えは以下のとおり。
(1)児童・生徒の学力向上のための取り組みは緊急かつ最重要課題であり、児童・生徒の学習の状況を学習習慣や生活状況を含めて把握し、教育委員会と学校、家庭が連携して取り組んでいくことが必要である。
(2)児童・生徒の学習の定着状況及び学習や生活習慣に関する意識、教員や保護者の意識を経年的に調査していく必要があること。
(3)調査を実施するにあたっては、区民・保護者への周知、公表の仕方、経年的な調査の実施、結果を受けての具体的な施策の実施など、適切に計画や準備を整える必要があること。
(4)平成17年度の本格実施に向け、平成16年はプレ調査を実施する。
(5)平成17年度の本格実施に向け、今回の調査を足立区の児童・生徒の状況を把握するのにより適したものにしていくために、プレ調査結果の分析や設問の考察に十分に時間をかけ、今後の調査に反映させる
現在、調査の結果を受け、より的確に児童・生徒の学習状況が把握できるよう、平成17年度に向けた調査の分析検討を行っている。
「学力調査」の活用と工夫
A4に授業改善策をまとめる
具体的な授業改善の手だてとして弘道小学校では、学力調査の結果を受けて、各学年・各教科ごとに課題と授業改善策を話し合い、A4版の用紙にまとめている。(図3)
図3
■図3 学力調査の結果を受けた算数科でのまとめ

学力調査の結果を受けて、4~6年生の算数担当者が記入した用紙。各課題に対して授業で改善すべき点が具体的に書かれている。川上校長はこれをもとに、実行されているかどうか確認し指導している
○○ができているので、△△を指導するというような具合だ。各担当の先生が書いてまとめることで指導ポイントが明確になり、校長もこの用紙を見ながら「△△の指導はどうなっているか」をそのつど聞くことができるのだ。川上校長は年3回、教員との面接を行っているので、その際にもこの用紙をもとに指導方法を確認していく。もし、発展的な問題が欲しいなど、教員から要望が出たときには、校長自らが資料を収集し、教員の指導をサポートしていく。


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