ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
PAGE 47/56 前ページ次ページ


教師の目線合わせは、授業をベースに、できることから

 「子どもの学力向上の取り組みとして、『大浦小学校として学力を保証する』と言えることが、保護者への説明責任を果たす上でも保護者との連携を図る上でも、一番大きいのではないかと思います」(寺井先生)
 では「学校全体で学力を保証する」つまり子どもたちに一定レベル以上の学力をつけるために、どのように教員全員のベクトルを同じ方向に向かわせればいいのだろうか。まずは、誰でもすぐに取り組めるものとして「課題を明確にして授業する」「課題に対するまとめをしっかり確認する」など基本的なことから全校で取り組むようにした。そして、課題解決学習における「3つの支援」についても共通理解を図った。そうやって積み重ねていくことで、少しずつ授業に対する全員の視点がそろってきたと寺井先生は感じている。
「やはり、みんなが同じ土俵に上がれるのは授業のこと。教科は違っても、授業の話を基盤にしていったことが、みんなの進む方向をそろえる大きなステップになったと思います。地道に、子どもたちが今日の課題について自分で考えを書き、それを出し合って、深め合えるような授業を毎日繰り返していけば、例え遠回りでも、考える力や物事にチャレンジする力が身についていくのではないかと考えています」(寺井先生)
「一人の十歩よりもみんなの一歩」を合言葉に、今日も大浦小学校の先生全員が、子どもたちの学力向上のために頑張っている。

 
「学力調査」の活用と工夫

(1)分析は各担任が行い、指導計画に生かす
結果の分析を担当の先生だけが行うのではなく、各クラスの担任が行う。そのために、事前の研修でデータの見方を共有した。各担任が行うメリットは、自分の授業を客観的に振り返ることができることだ。また、学校全体の課題ではなく、自分の担任するクラスの課題がわかることで、すぐに指導計画に取り込むことも可能になった。
また、大浦小学校では、「大浦スタンダード」という名称で、重点的に指導する内容を年間指導計画の中に位置づけている。その際に基準となったのが学力調査だ。通過率が低くなっているところを重点的に指導していく内容とし、カリキュラムに大浦の「O」という記号をつけ、年間指導計画の中に盛り込んでいった。
(2)他の調査・アンケートと組み合わせて分析する
分析は学力調査だけで行うのではなく、県の調査や学校実施のアンケートと組み合わせて行う。また、生活面での調査は、学力調査と調査項目を揃えてアンケートを実施し、継続的に追いかけるようにしている。集計は「学びの基礎力づくり」担当の先生が行い共有化している。以上の分析結果は、文書化したものを「大浦小学校子ども白書」としてまとめられている。
(3)子どもや保護者への説明に客観的な資料として活用
学力調査の結果は、子どもや保護者に対しても説得力がある。大浦小学校では、結果の見方について説明するプリントを作成し、担任から子どもにコメントを加えながら結果を渡していった。また、「スクールフォーラム」や家庭訪問の際の説明資料として活用するなど、複数の場で使われている。実施前は、学力テストに対して否定的な見方をする保護者もいたが、結果を見ると、学習材料になることが分かってよかった、という意見も得られた。



PAGE 47/56 前ページ次ページ
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse