特集 つながる幼小の「学び」 ―幼稚園・保育園から小学校、その接続を考える―
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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ますます重視される保護者への支援

 こうした長時間の保育は、子どもの発達にも影響を及ぼしている。3歳以前に入園し、さらに毎日、長時間を集団の中で過ごした場合、早い時期に社会性が身につく側面があるという。しかし、1クラスが最大35人までの幼稚園に比べ、保育園は20人以下のケースが多いため、人間関係が固定化し、多様な関係の中で“もまれる”経験が乏しくなる傾向もあると塩谷先生は話す。
  「集団内での絆は深まるのですが、逆に初対面は苦手という傾向も見られます。また、幼稚園の園児は、家庭と幼稚園を切り替えているように見えますが、保育園ではそれは難しいんですね。そのため、夕方になって疲れてくると、怒ったり、泣いたり、情緒が不安定になる子もいます」
  更に幼稚園児の母親は専業主婦であることが多いが、保育園児の保護者は共働きのケースがほとんどだ。そのため、保育園児は親子で一緒に過ごす時間が短く、その点も情緒面に影響を及ぼしているのではないかと塩谷先生は推測する。
  こうした背景もあり、保育園では保護者の支援も重要な役割となっている。
  「少子化や核家族化の影響もあって、子育ての知識に乏しい保護者が増えています。これは幼稚園でも同様でしょうが、特に保育園では生活のしつけを保護者と連携して進める必要があるため、保護者への情報提供は大切な業務の一つなのです。小学校の先生は児童への対応で手が回らないケースも多いとは思いますが、必要であれば、保育園とも連携して保護者へのサポートを充実させ、包括的に子どもを育てる態勢を整えてほしいと思います」(塩谷先生)
  とりわけ近年は、長時間保育を望む声に園が対応してきた結果、「子どもの世話は保育園に任せておけばいい」という考えの保護者もいる。そうした保護者に、「子どもと一緒に過ごす時間の大切さ」を教えるのも保育者の使命だと塩谷先生は話す。
  一方で、小日向台町幼稚園の酒井先生も「保護者も小学校との段差を不安に感じていることを考慮してほしい」と指摘する。幼稚園や保育園の場合は、保護者の送り迎えがあり、先生と話をする機会が多いため、保護者は園の中のことがよくわかる。ところが、小学校に入った途端、保護者からは学校の中のことが見えにくくなるからだ。
  「小学校の先生は、最初は特に、保護者とのコミュニケーションやお知らせの発信などを密にするよう、意識することが大切だと思います」(酒井先生)
図2
出典:「第3回幼児の生活アンケート」ベネッセ教育研究開発センター(調査概要は5ページ参照

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