特集 つながる幼小の「学び」 ―幼稚園・保育園から小学校、その接続を考える―

岡山大学教育学部附属小学校

1876年開校の長い歴史を誇り、来年度には創立130周年の節目を迎える。2001年度より4年間、幼小連携に関して、文部科学省研究開発学校に指定された。1986年度にも同様の指定を受けた経緯があり、幼小連携の分野では、隣接する岡山大学教育学部附属幼稚園との関係を生かし、先進的な研究を展開している。

山中芳和

校長 山中芳和
児童数 774人
学級数 22学級
所在地 〒703-8281 岡山市東山2-13-80
TEL 086-272-0511
FAX 086-271-3455
URL http://www.fuzoku.okayama
-u.ac.jp/el/index.htm


VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【実践事例】
岡山県
岡山大学教育学部附属小学校

幼小の枠にとらわれず子どもの発達段階に応じた活動を展開

小学校に入学してきた子どもたちは、新たな学習環境にどのような壁を感じるのか。
3歳児から小6生までの子どもの発達段階を分析し、各段階に適した指導のあり方を研究してきた岡山大学教育学部附属小学校による幼稚園・保育園と小学校との学びをつなぐためのさまざまな取り組みを紹介する。

1年生の教科の枠を撤廃

  岡山大学教育学部附属小学校の校庭の一角には“むしむしハウス”と名づけられたテントが張られている。周囲は蚊帳のような網で囲まれ、中では1年生の子どもたちがバッタを放して遊んでいる。「とんだー!」「この葉っぱは食べるかなぁ」「こっちの方が大きいよ!」。子どもたちの元気な声が校庭に響き渡る。
  これは、岡山大学教育学部附属小学校が2001年度から1年生に導入している「かけはし学習」の一場面だ。かけはし学習とは、就学前から小学校への接続をスムーズにするために、1年生の教科学習の枠をすべて取り払い、幼稚園や保育園で行われている“遊び”のような活動を取り入れた岡山大学教育学部附属小学校独自の学習スタイル。だが、幼児教育と決定的に異なるのは、活動を通して子どもたちが教科学習の面白さに目覚めていく点だ。
  冒頭で紹介したバッタと触れ合う活動も、このあと、さまざまな方向へと学習が深化していく。例えば、教師が「どんな風にとんでいた?」と聞くと、子どもたちは「ピョンピョンと」「ビューンと」「ブーメランみたいに」など、それぞれの感性を働かせて表現する。教師が「『とぶ』という言葉には、いろいろな言葉がつくんだね。いっぱい集めてみようか」と続けると、表現の面白さに気づいた子どもたちは「集めたい!」と意欲的な返事を返す。
  そこで、次の時間は体育館に移動し、今度は竹とんぼや風船、トランポリン、しゃぼん玉などで遊ばせて、「○○○ととんだ」と印刷された用紙の空欄に、「とんだ」を修飾する表現を記入させていく。「どんどん言葉を『ちょきん』しよう!」。教師の巧みな言葉掛けに呼応し、子どもたちは独自の表現を次々に考え出していく。
  これは“遊び”を「国語」につなげたケースだが、ほかにも、何十匹ものバッタを数えることで「算数」、動物の仕草や鳴き声を真似することで「表現」、デジタルカメラでバッタを撮影することで「メディア」など、一つの活動を多様な学習へと広げている。岡山大学教育学部附属小学校では、もととなる活動(ここではバッタとの触れ合い)を「フィールド」、そこから発展する学習(ここでは言葉集めなど)を「ステージ」と称し、1年生の1年間の学習は、さまざまなフィールドとステージで構成している(図1)。

図1 クリックすると拡大します
図1
「虫探し」「虫の世話」などのフィールド学習の中で、子どもたちの「ことば」や「かず」「メディア」に対する興味・関心が自然と生まれ、より焦点化されたステージ学習へと発展していく

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