特集 「学校力」を生み出す学校評価 ―幼稚園・保育園から小学校、その接続を考える―
東京都 葛飾区立渋江小学校

1934年、東京府東京市渋江尋常小学校として開校。47年に現在の校名に改称される。開校70周年にあたる04年から2年間にわたり、 飾区教育委員会の研究指定校として、「自ら考え、進んで学ぼうとする子どもの育成」をテーマに、児童の学習状況の把握と基礎・基本の徹底に努める授業づくりを研究した。

松山洋子

▲校長 松山洋子先生

児童数◎400人
学級数◎13学級
TEL 03-3694-1364
FAX 03-5698-1732
〒124-0014
東京都葛飾区東四つ木2-13-1
URL http://www.kyouiku.
katsushika.tokyo.jp/eshibue/
index.htm


VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
   PAGE 15/19 前ページ 次ページ

【事例2】実態把握から始める学校評価

学力調査の結果を複合的に授業改善に生かす

東京都  葛飾区立渋江小学校

「学校力」の核となる授業力。その授業力に関する評価項目を設定するうえで、格好の材料となる実態把握が学力調査だ。渋江小学校では、2005年度に実施した学習到達度調査と学習意識調査の結果を受けて、個を重視する指導を取り入れるなど、大幅な授業改善に着手した。

学力と学習意識の調査で多様な課題が顕在化

 渋江小学校がある東京都葛飾区東四つ木は、小さな町工場が軒を連ね、今も下町情緒が色濃く残る地域だ。地域住民のつながりが強く、子どもたちはのびのびと生活し、“生きる力”にも溢れていると松山洋子校長は話す。
  「校庭には暗くなるまで、元気に遊ぶ子どもたちの姿が見られます。かなり腕白な子どももいますが、高学年になると、授業中の態度は落ち着いた雰囲気になります。いわば、昔ながらの地域と学校とのよい関係が、子どもたちを伸びやかに育てる土台となっています」
  しかし、と松山校長は続ける。
  「東京23区内でも葛飾区は経済的な課題を抱える家庭も少なくなく、学力に対する保護者の意識も決して高いとはいえない傾向にあります。それは、少なからず子どもの学力にも影響しています」
  また、以前は教師の間でも、「テストの点を取れるようになるよりも、優しさや感情を表現できる能力を育てたい」といった考えが中心的だったという。情操教育の重要性は認めつつも、松山校長はこう語る。
  「学力が低迷する状態を放っておくわけにはいきません。しかし、現場の教師には、学力という言葉に過敏に反応するところがありました。校長や副校長との間に意識のズレがあったのです」
  そんな状況を変化させる契機となったのは、2005年度に葛飾区教育委員会が区内の小学校の学力向上をめざし、4~6年生を対象に行った学習到達度調査および学習意識調査だ。いずれも4月に実施し、結果は6月に各校に届けられた。
  学習到達度調査の対象教科は、国語、算数の2教科。渋江小学校の結果は、6年生は区の平均を上回ったが、4・5年生は平均を下回り、教科学力の不足が明らかとなった。加えて、学力低迷の原因を裏づけるかのように、学習意識調査ではさまざまな課題が浮き彫りになった。松山校長が話す。
  「テレビの視聴とゲームで遊ぶ時間の合計が1日平均150分に達していたのは、私の予想をはるかに超えていました。『宿題をしない』『忘れ物をする』『夜更かしして、朝は遅く起きる』といったこともめだちました。これらの問題は以前から保護者に注意を促していましたが、それが改めてデータで示され、このままではいけないという思いを強くしました」
  子どもの実態に危機感を抱いたのは、現場の教師たちも同様だった。経験的に感じていたことを客観的な数字で突きつけられ、教師の間にも「なんとかしなければ」という意識が広まった。
  「調査データの徹底的な分析から、学力の定着に向けた対策を練っていこうということになったのです」(松山校長)

   PAGE 15/19 前ページ 次ページ