特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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子どもたちが安心して自分を語れる場をつくる

 新学期当初は、授業での話し合いに参加せず、授業と関係のない本を読んだり、ノートに絵を描いたりしていた子どもがいた。3か月経った今、机の下で本を開いていた子どもは、顔を上げて積極的に話し合いに参加し、何度も手を挙げるようになった。絵を描いていた子どもも、友だちの話に耳を傾けている。
  「人の話を聴いているうちに、どんな意見もみんながちゃんと受け止めていることがわかり、安心して自分を出せると思ったのかもしれません。自分を認めてもらったり、自分も人のことを認めたりできる場は心地よいと、子どもたちが思い始めたのではないでしょうか」(木部先生)
  ただ、冒頭で紹介した道徳の授業で、「努力しないで天才になれるのもいいかも」と言った子どもは1人もいなかった。まだまわりに遠慮している部分があると木部先生は考える。
  「多くの子どもがスポーツクラブや塾に通う忙しい毎日を送っていて、それが努力の上に成り立っていることをわかっているのでしょう。もう少し揺さぶりたかったですね。1人でも多くの子どもたちが自分を素直に語れるように、じっくりと取り組んでいきます」
  この日の授業のあと、1人の子どもが木部先生にこうつぶやいた。
  「俺ってさ、やっぱ努力が足りねーよな。なんかさ、まずいよな」
  勉強にスポーツに前向きに頑張る友だちの姿勢が、子どもの心に響き渡ったのだろう。少し遠慮しつつも、子どもたちは大きく変わり始めている。


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