特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり
滝沢洋司

▲千曲市立治田小学校
教諭

滝沢洋司

Takizawa Yoji

教職歴24年。教育カウンセリングや対人関係ゲームの研究を続け、各種研修会で講師も務めている。日本カウンセリング学会認定カウンセラー、日本教育カウンセラー協会上級教育カウンセラー。


VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【事例2】児童の人間関係づくり

「対人関係ゲーム」で学級集団のコミュニケーション力を高める

滝沢洋司先生 長野県千曲(ちくま)市立治田(はるた)小学校

普段はあまり接したことがないクラスメイトといつの間にか言葉を交わし、手をつないでいる―。子どもたちが分け隔てなくコミュニケーションを取る場面を設定する「対人関係ゲーム」。この手法によって集団づくりを進める滝沢洋司先生の実践事例を紹介する。

コミュニケーションせざるをえない架空の場面をあえて設定

  「ありがとう」
  「ごめんなさい」
  そのたった一言が、互いを認め合ったり、トラブルを回避したりして、人間関係を築くきっかけになる。しかし、それが言えず、ズルズルと溝が深まってしまう……。
  コミュニケーションが苦手な子どもが増えているといわれる背景として、人間関係の希薄化や、地域や家庭の教育力の低下が指摘されている。では学校にできることは何か・・。そんな問題意識を持つ滝沢洋司先生は、学級集団の人間関係づくりのためのカウンセリング技法の一つ、「対人関係ゲーム」を授業に取り入れている。対人関係ゲームとは、それに参加することによっていろいろな人間関係を経験するゲーム(遊び)だ。
  「言葉をかけ合うスキルが欠けているだけでなく、家庭や地域の中でもコミュニケーションを取る場面が少なくなっているように感じます。だからこそ、集団でコミュニケーションせざるをえないような架空の場をあえて学校で設定する必要があると思います」
  対人関係ゲームには、遊ぶうちに自然に人と人とがつながって、集団内のコミュニケーションが円滑になるという効果がある。学級集団のまとまりの向上、いじめや不登校の予防、授業が成り立たない学級の立て直しなどを目的に実施されるケースが多い。発達段階に合わせて、ルールが簡単なものから複雑なものまでいくつものゲームが考案され、その中には滝沢先生が開発したものもある(図1)。
  「コミュニケーション力を育成する学習内容は国語の授業にもありますが、どちらかというと発信型です。自分の考えを発信できる子どもはそれでよいのですが、そこまでできない子どもも少なくありません。対人関係ゲームならば、『ゲームに勝ちたい』という同じ目的に向かって『敵が来たぞ!』などと必ず仲間に声をかけ、コミュニケーションを取ることになります」
  滝沢先生が担任を務める5年生のクラスでは、「やまびこの時間」(「総合的な学習の時間」)などを活用して月2回ほど対人関係ゲームをしている。実際のゲームの様子を見てみよう。

図1

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