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調査結果の課題解決に「振り返りカード」を開発
04年度から進められた授業研究では、教科を一つに絞った方が効果的と判断し、学力調査の結果から特に課題が目立った算数に重点が置かれることになった。
課題の一つに掲げられたのが、授業の定着度の向上だ。その課題を解決する手段の一つとして考案されたのが、「
振り返りカード
」である(
図3
)。これは、3年生以上の児童が、算数の授業の最後に自己評価をするためのプリントだ。各単元に1枚用意され、授業ごとの「学習のめあて」があらかじめ記入されている。授業の最後には、児童が三つの観点から自己評価を記入する。一つは「めあてを理解したか」で、授業の理解度を4段階の記号で記入させる。二つめは「授業を振り返って」で、授業で理解した内容や感想を記入する。三つめは「友だちとの学び合い」で、グループ学習の様子や、友だちと教え合ったことを書き込ませる。
▼図3 算数の授業で活用される「振り返りカード」(3年生)
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毎時間、学習の目標を明確にして見通しを持たせると共に、授業の最後に理解度や協同学習の様子を記入させて、各自に「自己評価」をさせる
この取り組みを続けるうちに、児童の意識や意欲が大きく変化していった、と林先生は喜ぶ。
「初めは自分が何を理解しているのか、または理解していないのか、わからない子どもが多かったのですが、自らの言葉で授業を振り返らせるうちに、次第に自分を客観視する力がついてきました。また、毎時間、目標を意識して授業に臨むため、理解が深まり、学習意欲も向上しました」
更に「毎時間、完璧に理解できなくても、最終的に単元全体のゴールに到達できればよい」と、長期的な見通しを持つ児童が増えたと林先生は続ける。
「授業には一連の流れがあることを児童に理解させることで、一度つまずいても、先の授業で挽回(ばんかい)しようとする前向きな気持ちが芽生えてきました。こうした意識や意欲の変化は、他教科の授業にも波及しています」
同様に、「お帰りプリント」も、授業内容の定着を目的とした教材である。これは、計算問題なら5問、文章問題なら2問程度のプリントで、4年生以上の児童が毎日の帰りの会で5分間ほどで取り組む。その日の授業の復習や、単元全体の振り返りなど、出題内容は日によってさまざまだ。1回の時間は短いが、積み重ねの効果が得られ、学習習慣の定着にも役立っているという。
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