第2部 学力調査を活用した実践事例 [事例3]岡山県 総社市立清音小学校
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「総合的な学習」の手法を国語の研究にも生かす

 国語の授業研究では、「総合的な学習」と算数で培った問題解決力を更に伸ばすことが目標に掲げられた。テーマは「『話す・聞く』『書く』『読む』活動を通して『伝え合う力』を高める」だ。
  これまでの指導や学力調査の結果から、これら三つの領域にはいずれも十分な力が備わっていないことが明らかになっていた。そこで、研究の対象をどの領域に絞るかを議論したが、最終的には低学年は「話す・聞く」、中学年は「読む」、そして高学年は「書く」に分かれ、すべての領域を研究することにした。そして、各学年部の研究を、「授業研究部」「学習環境部」が有機的に結び付けられるような計画を立てた(図2)。
  まず、清音小学校が最初に着手したのは、各学年部の研究領域の内容や、学年間の系統性についての研究だ。これで研究の全体像を描き、各学年が単元ごとの詳しい指導案を作成して、伝え合う力の向上を目指す授業を展開していったのだ。
  算数と同様、国語の授業でも「総合的な学習」とのつながりを強く意識した。一例として、6年生の「共に考えるために伝えよう」という単元を紹介しよう。
  この単元は4段階に分けられ、(1)「ユニバーサルデザイン」に対する意識を高める、(2)自分の身のまわりのものや施設を「ユニバーサルデザイン」の観点から見直し、調べていく、(3)それらを基に自分の意見を発表したり話し合ったりする(「話す・聞く」の活動)、(4)深まった考えを新しく造られる公共施設計画への提案書としてまとめる(「書く」の活動)という流れで展開した。
  「ユニバーサルデザイン」は、5年生の「総合的な学習」で福祉の分野を重点的に学習した経験を生かすことのできるテーマだった。また、テーマについて調べる、話し合う、提案書にまとめる、といった学習過程も「総合的な学習」と共通する部分が多い。そこに、国語的な「話す・聞く」「書く」などの要素を巧みに織り交ぜて、深みのある授業を展開したのだ。
▼図2 国語の授業研究の組織図(05年度)
図2
問題解決力の育成を最終目標として、各学年部が領域を分担して総合的な研究に取り組んだ。06年度以降は「書く」に焦点を絞った研究を進めている
  更に、「新たに造られる公共施設計画」は実在する計画だったため、子どもたちが書く提案書は、実際に市役所に提出することを想定してまとめさせた(図3)。教科で身に付けた力を、「総合的な学習」などで行われる実践的な活動で発揮できるようにすることも、この取り組みの狙いの一つだ。
▼図3 「共に考えるために伝えよう」の単元で作成された提案書
図3
「ユニバーサルデザイン」についての授業を展開。単元の終盤では、実際に市役所に提出することを想定して、新しい公共施設に対する提案書を作成した
  また、「話す・聞く」力の育成として、授業以外で日常的に行っている取り組みとして「スピーチワーク」がある。今の子どもたちは、友だち同士のコミュニケーションは得意でも、大勢を前にして話すことには慣れていない。また、話し方の基本的なスキルも身に付いていない。そんな課題から全学年に導入されたものだ。週1回、朝学習の時間を利用して、1人がクラスメイトに向かってスピーチをする。内容は、「最近のニュース」「お気に入りの本の紹介」「ぼく、わたしの好きな言葉」「職員室での話し方」など多彩だ。
  最初は言葉に詰まる子どもが多かったが、回を重ねるにつれ、計画的にスピーチできる子どもが増えた。更に、苦手意識が払拭されて、話すことそのものが好きになる児童も目立ったという。また、この取り組みは「話し方」だけでなく、「聞き方」の練習も兼ねており、友だちの話にじっと耳を傾けることができるようになったという。

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