第2部 学力調査を活用した実践事例 [事例4]大阪府 豊中市立大池小学校
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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ポイントは教師のコミュニケーション能力

 それでは、総合的な教育力を高める三つの柱とは、どのような取り組みなのだろうか。
  一つめの柱である言葉の力は、「話す・聞く」「書く」「読む」といった国語の枠組みでの取り組みが中心だ。これらの力を土台にしたコミュニケーション能力の育成を目指す。その背景には、学力が高い一部の子どもたちだけが先導している授業を見た、西澤校長の危機感があったという。
  「以前は授業中、2割くらいの子どもがパッと手を挙げて100点満点の答えを発言し、そのまま先へ進んでしまっていたところがありました。しかし、そこから教師が『本当にそうなの?』などと揺さぶりをかけ、ほかの子どもたちの疑問も引き出さないと、授業が深まらないと感じたのです」
  02年度から3年間、「コミュニケーション能力」について研究を重ねてきた大池小学校は「大池カリキュラム」と呼ばれるコミュニケーション能力育成のための独自のカリキュラムを持っている(図1)。その中で、低・中・高学年それぞれの目標を設定。例えば、「読む」ことについては、劇化や朗読などを通じて、単に「読む」だけでなく、表現することで理解をより深める工夫を実践している。
  「読み取ることは苦手でも、表現になると張り切る子どももいます。その子に表現させた上で、なぜ、そのような表現をしたのか議論を深めていきます。すると、子どもなりの創造性を生かしながら、再び本文に立ち返って正確に読み取るようになります」(西澤校長)
▼図1 大池小学校のカリキュラム(抜粋)
図1
  表現する機会を設けているのは、国語の授業だけではない。朝の会で自分の意見を述べるスピーチをしたり、「総合的な学習の時間」でポスターセッションを実施したりといった取り組みも盛んだ。理科や社会で図やグラフ、表を扱う際には、そこからどんなことが読み取れるのか議論を深めることもある。
  「子どもたちの間で意見が食い違ったり、ぶつかり合ったりすることもあります。その対立の裏にある考え方は何かを、ディスカッションを通して明確にしていきます。その際、クラス全員の議論だけでなく、3人ほどのグループ別で話し合うことも織り交ぜると、より意見が出やすくなります。学習発表会や児童総会などの発表を見ていると、言葉が非常にはっきりしてきました。3年生のころからスピーチを繰り返し経験している成果だと感じています」(西澤校長)
  このように、他者と協力することで学びが深まったり、友だちの良いところに気付いたりするなど、「総合的な教育力」の実践は常に意識されている。これらを実践する上で、ポイントになるのは教師のコミュニケーション能力だと、西澤校長は強調する。
  「子どものコミュニケーション能力を育てるには、まず、いろいろな意見を発するように子どもたちを導き、次に、それらを分類・整理する役割が教師には求められます。教師の側がこのような力をもっと向上させていかないと、子どもに『意見を出せ』と言っても、単に自由意見の言わせっ放しになってしまいます。また、子どもが感動して胸を震わせているとき、大人にとっては些細なことでも、『すごいね』などと共鳴してあげることも大切です。授業をデザインし、演出する力を教師が高めなければなりません」
  そのため、民間企業から専門の講師を招くなど、教師のコミュニケーション能力を培う研修を実施している。
  二つめの柱の「心を育てる」では、「社会性」「自尊感情」「人権」がキーワードだ。大池小学校では、「道徳教育全体計画」を作成し、学年ごとに身に付けてほしい目標を掲げ、詳細な指導計画を立てている(図2)。これを道徳の時間だけでなく、教科や学校生活全般で日常的に実践している。
▼図2 06年度道徳教育全体計画
図2

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