▲吉田研作
Yoshida Kensaku よしだ・けんさく◎ 上智大外国語学部教授、外国語学部長、上智大国際言語情報研究所所長。専門は応用言語学。文部科学省が提唱する「英語が使える日本人」の育成のためのさまざまなプロジェクトにかかわり、小学校英語指導者資格認定協議会理事、文部科学省初等中等教育局「英語が使える日本人」育成研究グループリーダーなどを兼務する。『外国人とわかりあう英語―異文化の壁をこえて』(筑摩書房)など著書多数。
教育には、「今がどうか」ではなく「10年後の日本がどうなっているか」という視点が必要だと語る吉田研作教授。小学校に英語教育が求められる背景を解説してもらった。
インターネットの普及、国境を越えた人的交流の進展などにより、人々の活動範囲は格段に広がり、世界は急速に狭まってきています。その典型ともいえるのが、EU(欧州連合)です。超国家的な体制の中で、多様な言語や文化を持つ人々が共生を目指しています。 日本でも、今の小学生が大人になるころには、グローバル化がますます進んでいるでしょう。現在、日本の全人口の約1.5%は在留外国人ですが、2010年には10%以上になるという予測もあります。日本を訪れる外国人観光客も現在の年間約670万人より増えていくでしょう。そして、今以上に、外国企業の日本企業買収も増えると思われます。「来週から当社は外資系になります」と突然言われることも珍しくなくなるのです。 「外国に行かなければ、英語は必要ない」とは言っていられない時代が来るということです。もちろん、日本にいるすべての外国人が英語圏の人ではありませんが、共通語としての英語が必要なことには変わりありません。 既に、アジア諸国の大半は小学校から英語教育を始めています。特に、韓国や中国、台湾は積極的で、英語力は大幅に伸びています。 一方、日本では20年前から英語力の必要性が叫ばれているのに、教育体制は変わりません。99年の「21世紀日本の構想」懇談会でも、グローバルなコミュニケーション能力を身につけなければ日本は沈没してしまうとあります。その土台は、英語力にほかなりません。