▲小泉清裕
Koizumi Kiyohiro こいずみ・きよひろ◎昭和女子大学附属昭和小学校教頭。専門は英語教育。昭和女子大学、附属の中学校、高校で英語教師を務め、1994年から小学校でも英語の授業を担当する。著書に『みんなあつまれ!小学生のえいごタイム―小学校4‐6年編』(アルク)がある。
言葉を通して人とつながる楽しさを伝えたい――。そんな思いで小学生への英語の指導にあたっている小泉清裕先生に、授業のポイントをアドバイスしてもらった。
「言葉を学びたい」という欲求は、人間の本能に近いと思います。乳幼児が自然に言葉を身につけていくのは、生きるための必然性もありますが、言葉を通して人とつながりたい、という思いも強く働いています。 私は幼稚園児から大学生まで、それぞれの教育課程の子どもに英語を教えてきました。その経験から言うと、明らかに小さな子どもの方が楽しそうに学んでいます。幼稚園児や小学校低学年の子どもは、日本語の習得過程の真っ只中にいて、「言葉を学ぶのは楽しい」という気持ちが強いため、英語にもスッと入っていけるようです。 「楽しい」という気持ちを引き出すには、子どもが言葉を習得する流れを踏まえることが何よりも大切です。乳幼児は言葉を聞き続けるうちに、突然、言葉を発するようになります。これはコップに水を注ぎ続けるといっぱいになり、溢れ出るのと同じで、言葉もある一定量が溜まると自然に話すようになるのです。 小学校の英語教育でも、まず「聞くこと」から始め、子どもの中に十分に言葉が溜まるまで、教師は待たなければなりません。 しかし、現在、多くの小学校で行われている英語活動では、「話すこと」から始めさせようとしています。これは、言葉を知らない乳児に無理やり話をさせようとするのと同じことです。一定の文を子どもたちに反復練習させても、単にオウム返しをしているだけで、自発的に「話す」ことにはつながりません。