みんなで取り組む小学校英語

【京都府 京都市教育委員会】

人口約147万人の政令指定都市。1994年度に京都市総合教育センターで小学校英語活動の研究を始めたのをきっかけに、カリキュラム作成を始める。2002年には教師による自主的な研究会「京都市小学校英語活動研究会」が組織された。


学校数●小学校183校、分校3校

所在地●〒604-8571 京都市中京区寺町通御池上る上本能寺前町488

TEL●075-222-3111(代表)

URL●http://www.edu.city.kyoto
.jp/kyoiku/


●英語活動実施状況

実施率●2000年度から市内全小学校に導入

時数●指定はしておらず、開始学年・時数が各学校に任されている

ALT派遣●市内全校。概ね2中学校区へ1名ずつ派遣

直山木綿子

▲京都市教育委員会指導主事

直山木綿子
Naoyama Yuko
*本文中のプロフィールはすべて取材時(07年3月)のものです
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【事例2】自治体のカリキュラム整備

独自カリキュラムと教材、研修会で、教師を支援

京都府 京都市教育委員会

英語活動を系統的に進める上で欠かせないカリキュラム。しかし、これを学校独自で作成するのは大きな負担となる。京都市では「どの小学校でも均質な英語教育」を目標に、カリキュラムと教材を作成。市内の小学校全校を支援している。

子どもの発達段階に沿った英語カリキュラムを作成

 小学校英語活動に熱心な地域として知られる京都市だが、カリキュラムの特例措置はなく、あえて国の研究開発学校の指定も受けていない。すべての小学校で均質な英語教育を行うようにするためだ。その方策の1つとして、京都市は独自に小学校英語活動のカリキュラムを作成した。1996年度に小学校英語の研究開発学校指定が全国に拡大されたことから、英語必修化を見越してカリキュラム研究を本格的に始め、97年度から3年かけて「きょうと英語フロンティア・キッズ事業」を推進し、英語活動を市内全小学校に導入した。
  99年度からカリキュラム研究に携わった直山木綿子指導主事が着目したのは、学習内容の「選択」と「順序」だった。
  「全国各地で作成されたカリキュラムの事例を調べると、『動物』『食べ物』といったトピックス別か、『学校で』『買い物するとき』という場面別で設定されたものがほとんどでした。しかし、食べ物より先に動物について教える根拠はありません。しっかりとした理論に基づいたカリキュラムが必要と考えました」
  京都市のカリキュラムは、「好き嫌いを表明する」「報告する」といった目的を達成するための言葉の働き=「言語機能」を軸に、活動内容を子どもの言語習得段階に沿って並べている注1)。その特徴は、授業に「タスク」という課題が必ず含まれることだ。
  「色板を組み合わせて顔を作るというタスクでは、子どもは『その形をください』と英語で伝えながら、顔を完成させます。ここでは、英語を覚えることが目的ではありません。『英語を使い、欲しい色板を手に入れ、顔を作る』という課題を達成することが目的なのです」
  つまり、コミュニケーションの手段として英語を使えるようになることが目的なのだ。
  02年度には、カリキュラムに沿ってつくった指導計画(図1)を市内の全小学校に配付。しかし、現場からは少なからぬ反発があった。
  「当時の計画では、教師に『こういう教材を作ってください』と言うだけで、具体的なサポートはありませんでした。それでは教師の負担が大きすぎると反省し、教育委員会が教材を作り、学校に貸し出すことにしました」
  直山指導主事が中心となり、カリキュラムに沿って作った教材は、教師やALT(外国語指導助手)に次々と使われた。
  「教材の作成をきっかけに、指導計画が現場に受け入れられたという手応えがありました。教師は、教材を手に取ると活用のアイデアがどんどん出てきます。実物を提示することがいかに大切かを実感しました」
注1:カリキュラムで採用した「言語機能」は、ヨーロッパ外国語教育のベースとして信頼性の高い言語機能リスト「Threshold 1990」(J. A. Van Ek & J. L. M. Trim, Cambridge University Press)が基になっている。配列については、日本語を母語とする幼児の言語発達に関する村井潤一氏の調査『言語機能の形成と発達』(1970年、風間書房)を基準とした
図1
学習を始めてからの年数に応じてステップ1~4までの段階を設定。各ステップは8~10のユニットからなる
http://www.edu.city.kyoto.jp/sogokyoiku/curri_c/es_eng.html

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