それほど多くの授業研究を可能としたのが、教師の負担を徹底して軽減したことだ。その一つは事前研修の省略だ。
「一般的に、授業研究では事前に何度も話し合い、時間をかけて授業の構想を練りますが、それでは教師は忙しくなる一方ですし、授業研究の回数も制限されます。そこで、事前研修を一切やめました。それに、指導的立場の教師の事前研修を受けた指導案では、担当教師自身の指導案にはなりません。本人の解釈で授業に臨んでこそ、授業力は高められると思うのです」(門田校長)
子どもの発言をつなぐ潮江小学校の授業では、「児童の予想外の発言が飛び出し、意外な方向に展開することもあり、子どもの感性に驚かされることが多い」(副研究主任・大山富子先生)という。事前に想定した授業を再現するより、「子どもがどのように教師の教材解釈を受け止めたか」を事後研修で探ることに力を入れる。そのため、指導案は簡素だ(図1)。「大まかな時間配分と、授業の焦点、どこに子ども同士の学び合いがあるのかがわかればよい」と、門田校長は話す。
どの授業研究を参観するかが個々の教師に任されるのも、負担を軽減するためだ。ただし、校長または教頭が必ず参観する。全校授業研究では時間をかけて事後研修をするが、個人の授業研究の事後研修は、2時間目と3時間目の間の30分休みや昼休みを利用し、15分程度で終わらせる。「時間が足りなければ、終了後に個別に伝えてもらう」(門田校長)と、時間厳守を徹底している。校長や教頭は気づいた問題点を指摘することもあるが、教師同士ではプラス面のコメントを伝え合うのが潮江小学校の方針だ。
「授業中の失敗は、本人も気づくもの。それを改めて指摘するのではなく、良い面を強調して『認められた』という実感を持たせた方が、プラスに働くと考えます」(門田校長)
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