データで読み解く新学習指導要領
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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引き続き土台となる「基礎・基本」

 新学習指導要領でも「基礎的・基本的な知識・技能の習得」は、最終目標の「生きる力」を育てる土台と位置づけられる方向だ。実際、「全国学力・学習状況調査」の分析では、「知識・技能を活用する力が身に付いている子どもは基礎的・基本的な知識・技能が定着している傾向にある」という結果が出た。
  ただし、中央教育審議会副会長を務める兵庫教育大の梶田叡一学長も、基礎・基本の徹底に偏る教育観には懐疑的だ。
  「基礎・基本はあくまでも『確かな学力』を構成する学力の一部。活用の力を併せ持つバランスのよい学力の育成を望みます」
  また、「たとえ強制してでもとにかく学習させること」を重視する教師が増えていることについては(図2)、「本当は強制でも、それを強制と思わせないのが教師の力量。関心・意欲を喚起した『学びへの誘い』を心がけてほしい」と梶田学長はアドバイスする。
  引き続き基礎・基本を重視すると同時に、次ページ以降に示す「思考力・判断力・表現力等の育成」「学習意欲」「学習習慣」なども考慮した指導の充実が求められるだろう。

Pickup 中央教育審議会「審議のまとめ」資料
低・中学年で重視される基礎的・基本的な知識・技能
 基礎的・基本的な知識・技能の一層の習得・理解を図るためには、どのような指導が有効か。中教審では、具体例の1つとして、次の方策を挙げる。(傍線は編集部)

 

「審議のまとめ」資料より(07年11月時点)
  第一に、発達や学年の段階に応じた指導の重視である。個人差等はあるものの、一般的に、小学校低学年から中学年までは、体験的な理解や具体物を活用した思考や理解、反復学習などの繰り返し学習といった工夫による「読み・書き・計算」の能力の育成を重視し、中学年から高学年にかけて以降は、体験と理論の往復による概念や方法の獲得や討論・観察・実験による思考や理解を重視するといった指導上の工夫が有効であると考える。
  このような観点から、「読み・書き・計算」などの基礎的・基本的な知識・技能の面については、小学校の低・中学年を中心に、発達の段階に応じて徹底して習得させ、学習の基盤を構築していくことが大切である。
  また、形式知のみでなく、いわゆる暗黙知(※1)も重視すべきである。このため、家庭とも連携しつつ、体験的な活動や音読、暗記・暗唱、反復学習などを通じて、基礎的・基本的な知識・技能を体験的、身体的に理解することも重要である。

 

※1 「形式知」とは、知識のうち、言葉や文章、数式、図表など明確な形で表出することが可能な客観的・理性的な知識のこと。これに対し、「暗黙知」とは、勘や直感、経験に基づく知恵などを指す


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