データで読み解く新学習指導要領
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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学習意欲には依然として課題

 家庭学習に重点を置くようになった傾向は、授業や生活指導で大切にしていることとして、「家庭や校外での生活も、できるだけ指導すること」を挙げる教師が増加している結果にも裏付けられている(図3)。更に、「たとえ強制してでも、とにかく学習させること」「授業の楽しさを多少犠牲にしても、学問的に重要なことがらを押さえること」を重視するといった回答が増えているのも、指導観の変化の表れだ。子どもの自主性や個性を尊重するよりも、教師の指導によって学習に向かわせる傾向が強まっていることを示唆している。
  PISAの結果でも、学力の重要な要素である学習意欲や粘り強く課題に取り組む態度には、個人差が広がりつつあるという課題が明らかになっている。ただし、「全国学力・学習状況調査」と過去の教育課程実施状況調査の結果の比較では、国語や算数が「好き」などと答える子どもの割合が増えているように、学習に対する肯定的な感情が上向いているのは注目すべき点だ。
  この改善は、基礎・基本の定着を重視したきめ細かな指導の結果生まれた、「できた」「わかった」という子どもの嬉しさが学習への前向きな気持ちにつながったとも考えられる。
  新学習指導要領においても、学習意欲の向上、および学習習慣の確立に向けた対策は重要視されている。今後の学校現場では、子どもたちが「習得」した基礎知識を、実際に授業で「活用」したり、「総合的な学習の時間」などでの教科横断的な「探究」活動に発展させることで、学ぶことの楽しさを持続させる指導の工夫が大切だ。
図3

出典:「第4回学習指導基本調査」(ベネッセ教育研究開発センター)

Pickup 中央教育審議会「審議のまとめ」資料
反復(スパイラル)学習でわかる喜びを

 学習意欲の向上と学習習慣の確立に向けて、中教審では、低・中学年における指導の徹底、反復(スパイラル)学習、学ぶ意義の認識、学校に対する支援等を示している。(傍線は編集部)

 

「審議のまとめ」資料より(07年11月時点)
  第一は、家庭学習も含めた学習習慣の確立に当たっては、特に小学校の低・中学年の時期が重要である。
  第二は、「重点指導事項例」なども参考に、補充的な学習といったきめ細かい個に応じた指導などを行うことにより、子どもたちがつまずきやすい内容をはじめ基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着を図る必要がある。分かる喜びは学習意欲につながる。このため、前述のとおり、学習指導要領においても知識・技能の確実な習得を図る上で、学校や学年間等であえて反復(スパイラル)することが効果的なものについては、内容事項に追加することが適当である。
  第三は、観察・実験やレポートの作成、論述など体験的な学習、知識・技能を活用する学習や勤労観・職業観を育てるためのキャリア教育などを通じ、学ぶ意義を認識することが必要である。また、職業資格、語学や漢字、歴史などについての各種検定への取組など具体的な目標設定の工夫も重要である。
  第四は、全国学力・学習状況調査等を通じた教育成果の様々な評価により、設置者等において、学習意欲や学習習慣に大きな課題を抱えている学校を把握し、これらの学校に対する支援に努める必要がある


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