新学習指導要領へのアプローチ 第1回 「言語活動」で広がる学び
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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6つの「言葉の力」をバランスよく伸ばしたい

 私は「言葉の力」の定義を幅のあるものにしておくことが大切だと考えています。論理的な思考力や豊かな感情表現力など、さまざまな「言葉の力」をバランスよく身につけさせる必要があるからです。
  学習指導要領の改訂に伴って2006年に設置された言語力育成協力者会議では、「言語力」を「知的活動(特に思考や論理)」、「感性・情緒等」、「他者とのコミュニケーション」の3領域に分け、それぞれの言語力の育成について提言しています。しかし、私は更に幅広く定義する必要があると考え、「言葉の力」を6領域に分けて提案しています(図1)。

図1
「言葉の力」を育てる教育メソッド一覧表」の全文ダウンロード(Excel:31KB)pdf  

  領域AからCについては、言語力育成協力者会議の定義と概ね一致しています。私が付け加えたいのは、領域DからFです。
  領域Dは「実践や行動につなげる力」です。課題に立ち向かうときに、企画を立て、言葉を通して気づきを促したり、やる気を起こしたりすることができる力です。領域Eは「自分を励まし創る力」で、他者を尊重する気持ちと共に自分を尊重する気持ちを持ち、自らの人生に対して明確なビジョンを描ける力です。領域Fは「言葉とその使い方を評価する力」。敬語や丁寧語を適切に使い、その間違いを正すことができる力のことです。他者と肯定的な人間関係を結びながら社会参加や課題解決を図るためには、これらの力を身につけることが大切になります。
  繰り返しになりますが、新しい学習指導要領では、「言葉の力」の育成に全教科・領域等で取り組んでいくことになります。仮説を立てて調査・観察・実験結果を検証するときに、子ども同士で議論させたり、結果をレポートにまとめて発表させたりといったことを、各教科・領域等で実践していくわけです。
  これは、従来の授業スタイルからの転換を意味しています。これまでの授業は、先生が子どもに一方的に知識を教え込む「知識習得型」の学習が多くの時間を占めていました。しかし、新学習指導要領を基準とした教育課程では、子どもが学んだ知識を使って議論や発表を行う「活用型」の学習が、授業の中に積極的に導入されることになるはずです。それに伴い、教科書も大きく変わることでしょう。この活用型の学習活動を進める上で非常に重要となるのが「言葉の力」なのです。

田中博之

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