新学習指導要領へのアプローチ 第1回 「言語活動」で広がる学び
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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課題解決の先に表現活動を設定する

 浜寺小学校の「読解力を育てる教育」の特徴を一言でいえば、アウトプットを重視していることである。
  「従来とはゴールが違います。これまでは、例えば理科なら、子どもに学習課題を与えて、それを解決することがゴールでした。しかし今は、課題解決の次のステップとして表現活動があります。観察や実験の結果を検証して、自分の言葉にまとめ上げ、それを発表会や理科新聞で表現することをゴールとしています。こうした活動を通じて、子どもの考えが深まり、考えたことや感じたことを表現する能力の育成が期待できるのです」(千賀先生)
  この表現活動をより実りのあるものとするために、学習の過程で積極的に活用されているのが「フィンランドメソッド」である。
  図1は、浜寺小学校における国語科の学習展開の流れを示したものだ。単元の最初で、子どもたちはテキストを読む前に「カルタ」を使い、テーマやストーリーにかかわるイメージを広げる。カルタとは、紙の真ん中にキーワードを書き込み、その中心から樹木が枝葉を広げるように、連想される言葉を書き込んでいくという学習方法だ(図2)。カルタはフィンランドメソッドでは重要なツールの一つで、頭の中にある自分の考えや発想を表に出し、整理することに使う。次に、子どもはテキストを一読して感想や疑問を話し合いながら、「この単元ではこの疑問を解決したい」という学習課題を設定する。そして、読みの目当てを持ち、文章の構造や接続詞、指示語などに気をつけながら、課題解決に向けてテキストの細かい内容を読み取っていく。
  学習課題を設定し、課題解決に向けて学習を進めていくというプロセス自体は、カルタを使っていることを除けば、ほかの小学校の国語の授業でも行われていることだろう。浜寺小学校の実践の特色は、その先があることである。千賀先生が説明した通り、「課題解決がゴールではなく、更にその先にゴールを設定している」ことだ。

図1
図2 「カルタ」の「ごんぎつね」(子どもの記入例)  
図2
「ごんぎつね」を読んで思ったことを書き込み、樹形図のようにイメージを広げていく  

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