子どもはテキストの細かい内容を読み取ったあと、筆者の書き振り、つまりテキストを構成する「型」を学んでいく。物語文にしても説明文にしても、文には一定の「型」が存在する。「型の提示と習得」もフィンランドメソッドで重視されていることの一つである。思考と表現の型を身につけることで、子どもは文章を的確に読み取る力や、「型」に沿って文章を書く力を獲得する。
最後は、劇や物語の創作などの表現活動へと発展する。例えば、児童文学作家の新美南吉の作品を通じて物語の「型」を学習したあと、子どもは「めざせ新美南吉」と題したワークシート(図3)に沿って自分の経験を基にした物語を執筆する。「話の始まり 時・場所・登場人物の設定」、「出来事の始まり 問題に出会う」、「大きな出来事が起こり、話が変化する」、「出来事の終わり 後の話」というように「型」が提示されているので、どの子も「型」を守っていれば物語を執筆できるというわけだ。
浜寺小学校では、学期に一つの重要単元を決めて、こうした活動にじっくり取り組んでいる。
取材では、4年生担当の森嵜(もりさき)章代先生の国語の授業を見学した。特徴的なのは、教材の内容に関する子ども同士での話し合いや、学習が終わったあとの振り返りに、多くの時間が割かれていたことだ。
「友だちの考えをしっかり聞き、自分の意見を整理してわかりやすく相手に伝える力は、社会に出てから絶対に必要になります。話し合い活動の中で、自然と身につけさせたいと考えています。この話し合い活動で大切なことは、やはり『型』だと思います」
授業では、「司会の進め方」と「話し合いの進め方」という「型」を子どもに提示してから話し合いをさせていた。子どもは「『型』があると話し合いが進めやすい」と話すという。
また、授業の終わりには授業で学んだことを振り返って書かせる時間がある。
「振り返りの活動でも『型』が重要になります。子どもは『文章の型』を身につけることによって抵抗なく書くことができ、しかも書くことによって、自分にどのような力がついたのかを確認できるのです」
|