VIEW'S REPORT
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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VIEW'S REPORT

教育に関するトピックを幅広い視点で取り上げます

韓国の小学校英語の現状
ベネッセ教育研究開発センター・GTEC調査を踏まえて

韓国では1997年より、小学校で英語教育が必修化された。
それから12年目を迎えて、韓国の英語教育はどのような進歩を遂げているのだろうか。
日韓高校の英語教育調査の分析データと、その結果を踏まえて実施した
韓国での現地調査を基に、韓国の小学校英語の実態を探った。

コミュニケーション力が際立つ韓国の高校生

ベネッセ教育研究開発センターでは、2006年7月~07年1月、日本と韓国における高校生の英語学習の実態を探る「東アジア高校英語教育GTEC調査2006(以下、GTEC(ジーテック)調査2006)」を実施した。読む・聞く・書くの3技能のコミュニケーション能力を測るテスト(GTEC for STUDENTS)を用いて、両国の高校生(1・2年生)の英語コミュニケーション能力を測ると共に、両国の高校英語教育の実態を把握し、成果と課題を明らかにすることが目的だ。
 そこからわかる特徴の一つは、英語コミュニケーション能力の差である(図1)。3技能のうち、リーディング(読む)とリスニング(聞く)では、韓国の高校生が日本の高校生を上回っており、平均スコアで見るとリーディングでは52.3点、リスニングでは23.9点(いずれも320点満点中)もの差があった。特にリーディングが高く、56.1%の生徒が成績上位層にいる。

図1
(出典/ Benesse 教育研究開発センター『東アジア高校英語教育 GTEC調査2006報告書』)

 もう一つの特徴は、英語使用経験の差だ。図2は学校外の日常生活で英語を使う場面や活動について尋ねた結果だが、韓国の生徒の経験率は、日本の生徒の経験率より約30~60ポイント高かった。
 これらの結果を踏まえて、ベネッセ教育研究開発センターでは、08年3月、韓国での現地調査を実施した。韓国の英語教育の最新情報を得ると共に、調査結果の要因を探り、日本の英語教育への導入、応用が可能かどうかを考察することが目的である。併せて、97年より韓国の小学校で正式導入された英語教育の影響についても探った。
 今回の現地調査では、小学校1校、高校4校に訪問し、授業観察および生徒・教師インタビューを実施。加えて、KICE(カイス)(韓国教育課程評価院、P.3参照)に行政としての施策と今後の展望を聞いた。調査には「GTEC調査2006」の調査企画・分析メンバーである昭和女子大の緑川日出子教授、東京外国語大の長沼君主(なおゆき)講師があたった。以下、小学校を中心として、取材の概要、および韓国の英語教育の現状を紹介したい。

図2
*韓国では、「学校外の日常生活で英語を使う場面や活動に関する質問」という形でたずねている。また、日本と韓国で異なるアンケート項目のため、共通する項目のみ集計した。
*日本:「(経験が)ない」「無答不明」以外の%。韓国:「(買ったことがない、したことがない、等)」「無答不明」以外の%。
(出典/ Benesse 教育研究開発センター『東アジア高校英語教育 GTEC調査2006報告書』)

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