VIEW'S REPORT
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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歌やゲームによる音声言語中心の授業

 韓国の小学校で英語教育が始まったのは1981年。教育改革の一環として4年生以上の児童を対象に特別活動としてスタートした。95年の世界貿易機関(WTO)加盟をきっかけに、世界化(国際化)政策の一環として英語必修化が具体的に検討され、97年に小学校の3年生から正規の必修科目として導入された。
 現地調査では、ソウル市の郊外にある公立のヨンジ初等学校(小学校)を訪問した。韓国の小学校は地域住民の経済状況によって、子どもたちの学力に大きな差が見られる。同校のある地区は保護者の教育熱や経済力は高いとはいえず、塾などの民間教育を受ける子どもは稀である。もっとも、同校はソウル市の教育重点校であり、教師や教育の質は高い。
 韓国の英語の授業時数は、3・4年で週1時間(年間各34時間)、5・6年で週2時間(年間各68時間)である。ヨンジ初等学校では、更に学校裁量により各学年プラス週1時間、および2年生で放課後授業を利用して週1時間の英語教育を実施している。

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◎ソウル市ヨンジ初等学校は、1988年創立の公立小学校。クラス数は2・6年生が各2クラス、ほかは各3クラス。教育格差解消のためのソウル教育庁の特色事業「エデュケア」を実施。共働きの家庭の児童のために、放課後や夏・冬休み、隔週土曜日に補習やレクリエーションなどを行っている
 小学校英語教育の目的は、日常生活で使用する基礎的な英語を理解し、表現する能力を育てることだ。そのため、授業は歌やチャンツ(メロディーを付けずにリズミカルに唱える詩や言葉遊び)、ゲームなど遊びを通した音声言語教育が中心である。文字については、4年生で基本的な名詞の読み、5年生で基本単語の読み、書きの練習を行う。6年生になると文章を扱い、4技能()を総合的に指導する。文法は現在形や未来形、不定詞など、日本の中2レベルの事項も扱う。
 英語に対する興味・関心を継続的に持たせることも重要な狙いの一つだ。韓国では、小3~高3の10年間で一貫した英語教育カリキュラムを整備している。小学校英語を導入段階と位置づけ、中学校、高校において積極的に英語学習に取り組む姿勢を身につけさせる。  評価に際しては、原則として数値化する方法はとらず、コメントを記述する。ヨンジ初等学校では年2回のテストを実施しているが、この結果も通信簿には記録されない。あくまで、個人の伸びを確認するためのものだ。
※「読む」「聞く」「書く」「話す」4技能のこと

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