新学習指導要領へのアプローチ 第3回 「問題解決能力」を高める理科指導
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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感動や驚きを基に 理解を深め活用へつなげる

 同校の授業では、どのように教材を活用しているのか。07年度に実践された5年生の単元「てこのはたらき」を例に挙げたい。
 はさみやピンセットなど、てこの原理を利用したものは身のまわりに多いが、子どもがその仕組みや便利さを意識する機会は少ない。そこで、浅永玲子先生は、この単元の導入時に、まず、子どもに水の入った20㎏の容器を持ち上げさせることにした。もちろん、重くて持ち上げられない。そこで、浅永先生は、子どもに棒を渡して自由に使わせた。すると、いろいろ試していく中で、てこの原理を用い、容器を持ち上げる子どもが出てきた。
 「どんなときに楽に持ち上げられるか、いろいろと試してみましょう」と、浅永先生は子どもに試行錯誤を促した。
 「最初は持ち上がらなかった重い容器が、棒を使えば簡単に持ち上がる。そうした驚きや感動から『てこの原理ってすごい』という気持ちが芽生え、次の学習への関心が深まるのです」と、浅永先生はねらいを説明する。最初にてこの効果を体感させるからこそ、次の授業で「力点」「作用点」「支点」といった理科の概念を学ぶ際に、興味を持って理解できるのだ。
 上皿天秤(てんびん)などを学習したあとは、「さお秤」を使って、生活の中でてこの仕組みが使われていることに気づかせる。ある子どもの祖父がさお秤職人であったことをきっかけに協力を依頼し、指導に取り入れた。
 「さまざまな大きさのさおを使い、数グラムのものから人の体重までを測らせました。てこの原理を実感を伴って理解させると共に、先人の知恵や科学のすばらしさ、楽しさを感じさせるのがねらいです」
 現代の秤とは仕組みが異なるため、当初、子どもたちは操作に戸惑っていた。そこで、実際に簡単なさお秤を作らせたところ、その仕組みがわかり、てこの原理についての理解が一層深まった。


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