新学習指導要領へのアプローチ 第4回 「活用」から考える授業づくり
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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具体的な授業例

楽しみながら思考を広げる活動を取り入れる

 吉田先生は、子どもが楽しみながら自分で思考を広げられるように、次のような活動も多く取り入れる。

●〈1年生〉サイコロを使った数合わせ
 数の意味と表し方を学習する活動。サイコロを振って出た数字をマス目に一つずつ書き込み、マス目が完成したら合計7になる隣り合う数字を囲む(図2)。縦横の隣り合う数字だけで、斜めはだめ。ルールを変え、合計を7以外の数字にしてもよい。

図2 サイコロを使った数合わせ。合計で7になる隣り合う数字を囲む。3つに並ぶ数字を足したり、L字型に足したりと、子どもの提案によってルールを柔軟に変えてもよい

 この活動は、一人でじっくり取り組むことができるので、早い子は2、3枚と取り組み、じっくり型の子は1枚を仕上げるなど、個に応じた活動ができる。早い子に対しては、早い子同士で確かめ合いをさせたり、皆で合計の数字を変えて行ったり、6以上の数字を含むサイコロを使ったりと、応用も可能となる。
 吉田先生のクラス では、ゲーム形式で対戦する姿や、より多くの数字を囲むために「三つの数字で7にするのはよいか」「縦と横につなげるのはよいか(L字型)」など、子どもが自ら発想を広げる姿が見られた。数についての習熟になると共に、二つの数字の関係を三つの数字の関係に広げるなど、活用を促す一例と言える。

●〈6年生〉体積の知識を活用した模型作り
 立体や体積の知識を活用し、指定する体積の模型を作る学習。模型を作る過程で体積を何度も計算するが、体積を求めるドリル学習をするよりも楽しく、子どもが進んで行う。
 一昨年に吉田先生が受け持った6年生のクラスでは、2007年にちなみ、2007㎤の模型を一人ひとり作った(写真)。縦・横・高さを決め、計算をしながら設計を確定し、展開図を作り組み立てる。「3㎝×3㎝×223㎝」の細長い直方体を作った子もいれば、いくつかの部分に分けて組み立てる子もいた。模型完成後は、子ども同士で体積がきちんと2007㎤であるかを計算し合って確認する。
 「紙の上での学習から一歩進んで実際に模型を作る作業を体験し、立体や体積への理解が深まりました」と吉田先生は話す。紙の無駄を減らすための展開図の効率的な書き方や、三角柱の体積の求め方など、領域を横断した活動が行えることもメリットだ。

写真
写真
写真:6年生が体積の知識を活用して作った模型。最初に体積が2007cm3になるように設計し、模型が完成したら最終確認をする。当初の計算からずれて最終調整が必要なこともあったという。例えば、写真右の「ブタ」の模型は、最終確認後にやや体積が少ないことがわかり、頭の上のリンゴの茎の長さで調整した

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