新学習指導要領へのアプローチ 第4回 「活用」から考える授業づくり

 

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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子どもの反応

考える楽しさを知ると思考が動き始める

 子どもは、こうした授業をどのように受け止めているのか。吉田先生は、子どもが算数を楽しいと感じる場面は二つあるという。一つは、計算中心のテストなどで高得点を取る達成感で、内容的には主に習得に関係する。もう一つは、習得した知識の活用を通して考える楽しさを感じる場面だ。
 「07年度末に、6年生に算数の授業の感想を書かせたところ、『考えるのが楽しかった』『教科書にない課題に取り組めたのがよかった』といった声が非常に多くありました。これまでの実践で、算数を通して考える楽しさを実感できた子どもは、テストで良い結果を出すよりも、はるかに大きな充実感を得ることを確信しています」
 PISA調査()などの結果から、子どもの思考力の低下が懸念されている。しかし、吉田先生の実践は、適切な指導を行えば、子どもが自ら思考を広げ、どんどん考えを進めていくことを示唆する。思考を促すと共に、表現の仕方を教え、そして何より考える楽しさを実感させる。そのような指導を通して、子どもたちは大きく変わるのかもしれない。

●無藤 隆先生が見る重要ポイント
 「活用力」は、たくさんの「引き出し」を持ち、新しい問題に対してそれを使う習慣を付けていくと育つことがよくわかります。自分で考えを進め、友だちと途中経過を発表し合いながら、前に学んだことを思い出して解く経験を重ねることで、新しい問題に積極的に対処するようになります。「考えることが楽しい」、「新しい課題に取り組めるのがよい」と思える子どもが増えることは、まさに「活用力」の指導の成果です。
注)経済協力開発機構(OECD)が実施する、15歳児(日本では高校1年生)を対象とした国際的な学習到達度調査。2000年に第1回の本調査を行い、以後3年ごとに実施。07年12月に結果が発表された06年調査は第3回。第1回は読解力、第2回は数学的リテラシー、第3回は科学的リテラシーを重点的に調べている

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