子どもは、こうした授業をどのように受け止めているのか。吉田先生は、子どもが算数を楽しいと感じる場面は二つあるという。一つは、計算中心のテストなどで高得点を取る達成感で、内容的には主に習得に関係する。もう一つは、習得した知識の活用を通して考える楽しさを感じる場面だ。
「07年度末に、6年生に算数の授業の感想を書かせたところ、『考えるのが楽しかった』『教科書にない課題に取り組めたのがよかった』といった声が非常に多くありました。これまでの実践で、算数を通して考える楽しさを実感できた子どもは、テストで良い結果を出すよりも、はるかに大きな充実感を得ることを確信しています」
PISA調査(注)などの結果から、子どもの思考力の低下が懸念されている。しかし、吉田先生の実践は、適切な指導を行えば、子どもが自ら思考を広げ、どんどん考えを進めていくことを示唆する。思考を促すと共に、表現の仕方を教え、そして何より考える楽しさを実感させる。そのような指導を通して、子どもたちは大きく変わるのかもしれない。
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