既習の内容を活用する場面には次の二つがあると、早川先生は考える。
- 「算数」をつくり出す場面
既習の内容を基にして、新たな知識を獲得し算数をつくり出す。
- 日常生活に関連する問題に取り組む場面
算数の知識や知恵を使って、日常生活に関連する問題を解決する。
1.の指導例が2年生のかけ算だ(次ページ図)。指導は、かけ算九九をつくる根拠になる「きまり」を発見する1~5の段の前半と、それらを活用して6~9の段を「つくる」後半に分かれる。そして、並行して九九を暗記する。
「教師がかけ算を一方的に教えるだけなら、子どもは受け身で暗記するだけです。そこで、みんなでかけ算九九をつくりながら、新しい段をつくるときに使える『きまり』を発見させます。そして、『次の段でもきまりを使っていこう』という気持ちを高めます。新しい段をつくる学習のときには、『見つけたきまりが新しい段でも使えるはずだ。使ってみよう』という気持ちで、自分の力でかけ算をつくる経験をさせていきます。このようにして、未習の段や大きな数の計算にも、きまりを積極的に活用していこうと取り組むようになるのです。きまりを知っていると、たとえ『9×6=54』を忘れてしまっても、9×5に9を足すなどして、自ら答えを導き出せることができるよさもあります」
2.の指導は例えば次のように進める。6年生では、学習した比例の考えを活用して、ふたを開けずに箱の中のミカンの数を求めさせる。子どもは「箱の総重量を測り、1個のミカンの重さで割ればよい」「ミカンのサイズを測り、いくつ入るかを計算すればよい」といった解法を考え出す。
算数の知識を活用する指導を通して、算数は、日常生活のさまざまな場面に活用できると実感させる。
「算数を使うと毎日がより豊かになると実感すれば、子どもは算数に強い興味を抱きます。同時に、新たな問題に直面したとき、意欲的に算数を生かそうとするでしょう。確かに、子どもにじっくり考えさせる授業は時間がかかります。しかし、そこで培われた『活用力』は、算数の学習にとどまらず、より良い人生を送るための力になるはずです」 |