新学習指導要領へのアプローチ 第4回 「活用」から考える授業づくり
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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図 きまりを基にかけ算をつくり出す授業(2年生)

     ねらい
  • かけ算の意味やきまりを基にして、かけ算を自分でつくれるようになる。
  • 1 桁×2 桁のかけ算など、九九を超えた大きな数のかけ算も、きまりを活用して解けるようになる。
  • 九九を忘れても、自分で答えを導き出せるようになる。
かけ算(1):かけ算の意味から5 の段まで(全23 時間)
指導の流れ かけ算の意味を理解したあと、5の段までの九九の構成の学習を通して、
「まえたしほう」「しきぎゃくほう」「だんたしほう」というきまりを発見する。
かけ算の意味を教える
図 ものがいくつかの同じ数のまとまりに分かれている場面と、ばらばらの場面を提示して比較させる。全体数を求める際、同じ数のものがいくつかある場面では、足し算が簡単になる方法として、かけ算を教える。

指導のポイント 図のように同じ数の団子が入った複数の箱を見せ、「全部の団子の数を知るには何がわかればいいかな」と問い、「1箱当たりの団子の数」と「箱の数」が必要であることに気づかせる。かけ算をするには、「1つ分の大きさ」と「いくつ分」を知る必要があることに気づかせるために、箱にふたをして、1つだけふたを取ると中身が見えるようにするとよい。
まえたしほう(「前足し法」:乗数と積の関係)の発見
図 5の段をつくる学習で、かけ算の意味に基づいて5の足し算を繰り返せば、答えが求められることに気づかせる。これを「たすたすほう」などと名付ける。次に、1つずつ足していかなくても、1つ前の答えに5を足せば、簡単に答えが求められることを発見させて、「まえたしほう」などと名付ける。

指導のポイント 子どもから「まえたしほう」の考えが出ない場合は、「1つずつ足すのは大変だから、もっと良い方法はないか」などと思考の焦点を絞らせる。きまりの名前は子どもたちと一緒に付けていく。
しきぎゃくほう(「式逆法」:交換法則)の発見
図 アレイ図や「まえたしほう」の式を基に、3の段の答えを出していく。その過程で、「3×5の答えは5×3と同じ」などと、かける数とかけられる数を逆にしても答えが等しいことに気づかせる。

指導のポイント 3×5のアレイ図を90度回転すると、5×3のアレイ図になることに気づかせる。「1つ分」と「いくつ分」が逆になるので式の意味は変わるが積は変わらない。そこで、新しい九九をつくるときに使えるきまりとする。
だんたしほう(「段足し法」:分配法則)の発見
図 1、2、3、5の段の答えを九九表に書き込み、気づいたことを話し合わせる。そして、「1の段+1の段=2の段、1の段+2の段=3の段、2の段+3の段=5の段」などとなることに気づかせる。

指導のポイント 子どもが見つけたらすぐに試すことが大切。九九表で「1の段+1の段」「1の段+4の段」と、実際に足して確認する。更に、新しい段をつくるときに使えるかを検討する。「6の段だったら」などと予想させ、「使えるぞ、使えるはずだ、使ってみたい」という気持ちを高めさせる。
かけ算(2):6 の段からまとめまで(全17 時間)
指導の流れ これまでに発見したきまりを活用し、6~9の段を自力でつくる。子どもの主体性を重視し、どのきまりを用いるかは子どもに選ばせる。その後、2桁のかけ算「3×14」に取り組ませ、発見したきまりを活用して大きな数のかけ算の問題解決に挑戦する。
発見したきまりを活用して8の段をつくる
図 ノートにアレイ図や式を書かせて、8の段の答えを求めさせる。どのきまりを用いるかは自由。その後、どのような方法で答えを求めたかを発表させる。6、7、9の段でも同様の学習をする。

指導のポイント 1つの方法でかけ算を構成できたら、きまりを正しく使えたかどうかを確認するため、別の方法でもう一度構成する。選択したきまりが妥当であったかどうかも確かめる。
3 × 14 に挑戦する
図 「教室の後ろのロッカーは全部でいくつあるか、かけ算で計算してみよう」と、「3×14」に取り組ませる。

指導のポイント 問題を図に表して、これまでのかけ算のきまりが使えそうであるかを話し合い、問題解決にあたらせる。
授業の工夫
かけ算のきまりをいつでも活用できるようにする
▼クリックすると拡大します
図
見つけたきまりに名前を付ける
あるきまりに対し、アレイ図をイメージする子もいれば、式をイメージする子もいる。そこで、イメージを共通のものにするため、「まえたしほう」などと名前を付ける。

きまりを教室に掲示する
皆で発見したきまりは教室に掲示し、九九を構成したり説明したりするときに、いつでも確認できるようにする

教室に掲示したかけ算のきまり。その後の単元でも、かけ算を使用する機会が多いため、そのまま掲示している

学習感想を書かせて思考を深める
図 考えさせる授業をしたときには、学習感想を書かせて、その時間の思考の整理や見直しをして学習を深化させる。教師は、子どもの記述を授業評価の参考にする。学習感想の記述は、最初のうちは「楽しかった」「わかった」といった表現が多いが、「何が楽しかったの?」と教師がコメントをすることで、授業の内容や友だちの良いところなどが書けるようになる。

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