▲松下佳代
まつした・かよ◎京都大大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(教育学)。専門は教育方法学。京都大教育学部助手、群馬大教育学部助教授等を経て、2004年から現職。著書に『パフォーマンス評価~子どもの思考と表現を評価する~』(日本標準)、『学びのための教師論』(共著・勁草書房)など。
子どもに「活用力」が付いたかどうかを確かめるのは、答案の正誤を基に得点を付けることが主目的の従来型のテストでは難しい。 評価方法を考えるに当たり、一つの足がかりとなりそうなのが、思考力などを測れる「パフォーマンス評価」だ。その特徴や方法について、京都大の松下佳代教授に聞いた。
Q1:「パフォーマンス評価」とは何でしょうか
A1:「パフォーマンス課題」によって学力をパフォーマンス(ふるまい)へと可視化し、学力を解釈する評価法です その仕組みは、フィギュアスケートの評価方法と似ています。フィギュアスケートでは、専門家が実際の演技の過程を見て、一定の基準に沿って採点します。同様にパフォーマンス評価も、「パフォーマンス課題」に取り組ませることで、子どもの学力を「見える」ようにし、「ルーブリック」という評価基準を使って評価します。パフォーマンス課題は、評価したいと思う学力ができるだけ直接的に表れるものにする必要があります。
Q2:「パフォーマンス評価」の利点を教えてください
A2:従来のテストでは見えにくい「思考力」「表現力」などを具体的な表れとして見られることです 例えば、算数で、思考の過程を表現させる課題を出し、式や言葉、図、絵などさまざまな方法を用いてもよいとすれば、子どもは自分なりに考え、表現しようとします。 パフォーマンス評価では一つとして同じ答案はなく、子どもの思考や表現は実に多様だと実感できます。子どもの思考を理解するのに役立ち、子どもは「書く」経験を積めます。答案を発表し合えば、友だちの考えへの理解や、個性の自覚にもつながります。
Q3:「思考力」や「表現力」を測る「パフォーマンス課題」で得点の高い子どもは、これらの力があるといえますか
A3:「パフォーマンス評価」は有効な方法ですが、「思考力」「表現力」を丸ごと測れるわけではありません あくまでも一つの課題に対する結果と考えてください。「思考力」や「表現力」という力そのものを把握できる方法はないので、実際の表れ(=答案)から、その背後にある子どもの思考や表現の特徴を把握しようと努めることが大切です。