▲金森強
かなもり・つよし◎中央教育審議会外国語専門部会委員、文部科学省スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)企画評価協力委員、日本英語音声学会、日本児童英語教育学会・小学校英語教育学会理事。主著に『小学校英語教育の進め方―「ことばの教育」として―』(共著・成美堂)、『小学校の英語教育―指導者に求められる理論と実践』(教育出版)など。全国の学校を回り、教員研修や授業指導を行っている。
Q1:英語活動のねらいを改めて確認させてください
A1:英語力よりも「コミュニケーション能力を育てる」ということが目的です 新学習指導要領には「コミュニケーション能力の素地を養う」とありますが、この能力は、会話や表情、ジェスチャーなどの表現方法を通して気持ちを伝え合う力です。漢字一字で表すなら「想」がふさわしいかもしれません。相手の「想い」をじっくり考え、自分の「想い」を伝えるというイメージです。 コミュニケーションの出発点は、相手に興味を持つこと。この気持ちから、相手の話にうなずいて反応したり、言葉の意味をしっかり考えたりする態度が生まれます。こうした人とかかわるために必要な力を育むことが英語活動のねらいです。 子どもが十分にコミュニケーションを取れたかどうかは、活動を振り返る言葉で分かります。「自分のことを話せた」という子は自分だけに関心が向いていますが、「みんなの好きなものが分かった」「Aさんの表情や言い方が良かった」といった言葉は、気持ちや情報のやりとりが出来たことを示しています。
Q2:そのような力は他教科でも育てられるのではないでしょうか。なぜ英語活動で育む必要があるのでしょうか
A2: もちろん他教科でも育ちますが、英語活動には他教科にない利点があります まず、言葉が分かりにくいため、相手の話をしっかり聞こうとし、表情やジェスチャーにも注意を払うようになります。日常生活では話題になりにくいことを質問し合えるのも、英語活動ならではです。好きな食べ物や動物、将来の夢などを話すことによって、子ども同士の理解が深まると同時に、相手の話を聞く楽しさに気付きます。英語活動によって普段あまり話さない子ども同士の交流が生まれ、学級経営がうまくいくようになったという話を耳にします。 外国人や異文化への抵抗感が少ない、なるべく早い時期に英語に触れさせることにも大きな意味があります。実際、小学生はALTとすぐ親しくなり、それが入り口となって外国語や異文化への興味を深めていきます。
Q3:なぜ担任が教える必要があるのでしょうか。ALTに任せてはいけませんか
A3: コミュニケーションを活発にするには、担任と子どもが一体になった活動が極めて効果的です 担任と子どものつながりが非常に深いのが、小学校の特色です。たとえすらすら言えなくても担任が手本を見せれば、子どもは勇気を出して話そうという気になるでしょう。担任ならば、子どもの発達段階、関心、状況に応じた素材を用意できます。スポーツ好きな子にスポーツの話をさせたり、家庭の問題に悩んでいる子に配慮して家族の話を避けたりすることは、ALTには出来ません。 また、教師にとって英語活動の指導法を考えることは、「教えること」を振り返る良い機会になります。「どうすれば子どもは理解するか」という視点でゼロから考える経験は、他教科の指導にも通じるはずです。教材の工夫など、新たな発想が生まれると思います。