移行措置対応のポイント 第1回 担任が進める英語活動
井上滋

▲八千代市立萱田小学校校長

井上滋

Inoue Shigeru

岩本あずさ

▲八千代市立萱田小学校

岩本あずさ

Iwamoto Azusa
3年生担任、英語主任

新垣義貴

▲八千代市立萱田小学校

新垣義貴

Aragaki Yoshiki
5年生担任

石井亜佐美

▲八千代市立萱田小学校

石井亜佐美

Ishii Asami
6年生担任

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「通訳」から「活動を進める」役割へ、教師の意識が変化

 活動を始めてすぐの07年度1学期、既に子どもは「分からない」という状況にあった。そこで、担任も徐々に活動に加わるようにしたが、あくまでも「今、こんなことを話したよ」とALTの話を通訳することが中心で、活動の主導はALTだった。このような1年を過ごし、5年生担任(当時)の新垣義貴先生は、英語活動の意味を考え直したと言う。

 「子どもにALTの英語を通訳しても、活動の目的があいまいだったため、子どもの意欲は高まりませんでした。そうした姿を見て、私を含めて多くの教師が『担任が主体的に活動を考え、行う必要がありそうだ』と考えるようになりました」

 教師の意識の変化は、07年度と08年度の各年度の初めに実施したアンケートの結果に明確に表れている(図1)。「英語活動における担任の役割」として、「ALTの補助者」を選んだ割合は80%から19%へと大幅に減った。同様に、「児童の理解を助ける仲介者」という回答が減り、担任が「通訳」として参加することに疑問が生じたことが分かる。08年度のアンケートで、「学習の雰囲気を作る媒介者」「指導計画・活動内容の計画者」といった担任が主体的にかかわる項目を設けたところ、これらが回答の上位を占めた。

図1 教師へのアンケートの結果(抜粋)

「英語活動における担任の役割はどのようなものだと思いますか」(複数回答可)で各項目を選んだ割合。07年度には「補助者」「助ける」役割と考える割合が高かったが、08年度には「雰囲気作り」「内容等の計画者」などの中心的な役割へと意識が変わってきたことが分かる *07年度には項目が無い

実践を通じた試行錯誤でALTとの役割分担を明確化

 08年度はまず英語活動のねらいを再確認するため、「英語活動を通して付けたい力」を明らかにした。「英語活動への児童の意欲を高め、コミュニケーション能力を育てたり、国際理解を深めたりする活動ができるようにしていく」ことを目標とし、07年度の反省に基づき「意欲を高める」ことを最も重視した。
  その上で、意欲を高めるためには、「英語が『分かる』活動になるように、担任の役割を工夫する」「英語を『楽しい』と思えるように、教え方や教材を工夫する」ことが大切であると考え、活動を担任主導に切り替えた。当初、苦労したのはALTとの連携だ。
  「担任とALTの役割分担がはっきりせず、連携がうまくいきませんでした。担任が英語の指導に不慣れだった上に、ALTにチームティーチング(TT)の経験が無かったことなどが原因だと思います」(岩本先生)
  研究授業や中学校の視察をしながら理想的なTTの形を模索し、実際に活動に取り入れて試行錯誤をした。例えばフラッシュカードのめくり方や活動中の間の取り方など、担任がALTの実践を見て、子どものテンポと少しずれていると感じた時は、担任がその部分を代わった。実際に活動しながら「この部分は担任が行った方が良い」と感じた所は、担任が実践を試みた。
  担任とALTとの役割分担を工夫していった結果、「ALTも、子どもの興味を引き出すのがうまい担任が進行役を務めた方が良いと感じ、自分はサポート役になってくれたのではないでしょうか」と、新垣先生は振り返る。今では、ALTは発音やゲームなどのデモンストレーションを行ったり、表現方法を教えたりする役割を担う。
  担任とALTの打ち合わせは、原則として毎週行う。6年生では、まず担任が集まって活動の内容や流れなどを検討。ALTに「この部分はお願いしたい」と役割分担を確認し、活動内容へのアドバイスを求めている。


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