齊藤 |
もう一つ、習得と活用が密接な関係にあることを示しているのが、授業例【4】の「四角形の面積」です。この指導はどの教科書でも扱われる素材を使っていますが、素材の組み合わせ方を工夫して、子どもが面積を求める際の簡潔な方法や、一般性の高い方法を見いだせるような流れにしています。もし基礎・基本に不安があれば、最初に確認すれば良いでしょう。授業例【4】では、最初に最も基本的な長方形の面積の求め方を確認しています。活用を進めるにつれ、長方形の面積の求積についての習得も深まっていきます。基礎・基本を活用する場面が用意されれば、子どもはおのずと活用する。活用すれば、更に基礎・基本が強化されるという流れで、学習が展開していくのです。 |
中村 |
このような授業をつくるには、教師が単元のつながりや系統を意識する必要があります。あらかじめ既習と未習の内容を整理し、「この既習内容は定着していないようだ」と思ったら、その場で確認すれば良いのです。 |
齊藤 |
たとえ習得の段階でつまずいても、活用することによって確かな習得が図れることは多々あります。活用の過程の中で、その都度基礎・基本を確認すれば、子どもは「以前に習ったことを使えば良いのか」という意識を持ち、学ぶことの良さ、価値に気付いていきます。 |
中村 |
先生方は自分なりの指導法を持っていますし、これまでと少し視点の異なる考え方を取り入れることに抵抗があるかもしれません。ただ、常に日々の授業を振り返ることが大切です。教師同士で指導法や子どもの反応などについて情報を交換すれば、習得と活用が一体化した授業をつくっていくことが出来るでしょう。 |
齊藤 |
知識を伝えるだけでは、子どもの思考は動きません。「教科書を教える」のではなく「教科書で教える」ことが大切です。教科書の素材をうまく活用し、子どもの思考を促す指導にするという、指導方法の工夫が期待されていると思います。 |