▲寺井正憲
てらい・まさのり 徳島大教育学部卒、筑波大大学院博士課程単位取得退学。文教大講師、筑波大附属小学校教諭を経て、現職。専門は国語教育学。『小学校学習指導要領解説国語編』作成協力者。近著に『小学校国語活用力を育てる授業~いま身につけさせたい「言葉の力」と指導の実際~』(共編、図書文化社)、『聞き手参加型の音読学習』(編著、東洋館出版社)など。
◎PISA調査などから思考力など学力面の課題が浮上
思考力・判断力・表現力の育成が課題となり、国語を中心とした各教科で「言語活動の充実」が求められている。
「言語活動の充実」によって
●実生活で生きる言葉の力を付けられる ●思考力・判断力・表現力が育まれ、「生きる力」が高まる ●誰もが活用の文脈の中で基礎・基本を習得できる
◎指導事項を課題解決のプロセスに沿って整理
自ら学び、課題を解決していく能力の育成を重視し、PISA型の課題解決プロセスが盛り込まれた。指導においては、この学習過程を意識することが大切。
◎言語活動例が具体化され、「内容」に盛り込まれた
実生活とのつながりを重視し、報告・記録などの言語の機能や表現の様式を明示して、充実させた。言語活動を通して、指導事項を指導することが一層重視されている。
◎教師自身が言語活動を体験してみる
子どもに付けたい力が明確になる。教師が作ったり、行ったりしたものを提示することで、子どもの意欲も高まり、活動も進めやすくなる。
◎「学力調査」を活用する
文部科学省「全国学力・学習状況調査」の問題は、今後、求められる力を踏まえて作られている。言語活動を通して身に付けるべき力を考える参考にすると良い。
[1] 思考力・判断力・表現力の育成が課題
新学習指導要領において言語活動の充実が求められている背景には、PISA調査で明らかになった「読解力」の低さなどの学力課題があることを、まずはご理解ください。文部科学省「読解力向上プログラム」(2005年12月)によると、PISA調査では、「解釈(*1)」や「熟考・評価(*2)」の問題に弱く、とりわけ「自由記述(*3)」で無答率が高いことが明らかにされています。 こうした課題に対処するために、習得した基礎的・基本的な知識・技能を活用することを通じて、思考力・判断力・表現力を高めていくことが求められています。そのために必要なことは、習得と活用の学習が一体となり、子どもの学習意欲を引き出すことの出来る「言語活動」にほかなりません。レポートの作成、記述などの、知識・技能を活用する言語活動は、国語を中心として各教科で進められていくことが、新学習指導要領で強調されています。言語の能力を育成することは、思考力・判断力・表現力等の基盤にもなります。