ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
学力向上への総合的な取り組み

京都市立
御所南小学校
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II 「学ぶ力」をつけるために
 「学ぶ力」は,すべての教科・道徳・特別活動を通してつけていくものだが,教科の力を応用・発展させる大きな力として,特に総合的な学習でつけようとしている。
 総合的な学習を構成するにあたっては,問題発見・解決的な学習過程をとり,子どもたちが学習することを通して,学ぶスタイルが身につけられるようにした。
 問題発見・解決的な学習過程をとるために,単元の構想を大切にしている。また,単元の中心にあたる部分に「中心課題」を設定し,学年全体の課題に向かって,自分の課題を解決していくようにしている。この課題設定までの時間を十分にとることにより,子どもの興味・関心を深め,追究意欲が高まるようにしている。
1 発見力(問題に気づく力)をつける
(1)問題を発見できる体験や観察
 学習の初めの場面に,問題を発見できるような体験や観察を入れている。その一つは,自分の予想とずれるような体験や観察である。もう一つは,感動するような体験や観察である。このような体験から生まれる疑問や感動を大切にして,問題を発見できるようにしている。

(2)キーワードでまとめる
 体験したり観察したりして感じたことは,キーワードでまとめるようにしている。体験や観察の後の交流で,キーワードとなる感想を出し合い,それをもとに自分の感想をまとめるようにすると,自然や社会を見る目が育ち,問題を発見する力がついてくる。

(3)体験や観察を構成する
 体験や観察を,単元のねらいに沿って意図的に構成するようにしている。子どもたちは,最初の体験に影響を受け,その中で単元を通しての活動方法なども学ぶことになる。最初の体験の後に,いくつかの体験を重ねることにより,比較したり総合したりする目が育っていく。
2 設定力(課題を設定する力)をつける
(1)問題を自分の課題にする体験
 これまでに気づいてきた問題を,自分が追究していく課題にするためには,自分でも少しやってみるような体験が有効である。
 問題を見つける段階とは少し違った体験を入れて,自分とのかかわりで課題を設定できるようにしている。

(2)課題を設定する
 これまでの体験や観察をもとに,自分の課題を設定する。このとき,「自分の問題をつくっていこう」というように働きかけていきたい。
 実際に課題設定ができにくい子どもには,どのようにしたら問題がつくりやすいのかという指導も必要である。また,すぐに終わってしまう課題を選択しないように,問題の大きさなどにも着目できるようにしている。

(3)一人一人の課題を「中心課題」に
 一人一人の課題ができて,すぐに課題追究に入ると,全体で交流するときに接点のない交流になってしまう。そこで,一人一人の課題をつなぎ,全体を含みこむような大きな課題(中心課題)を設定するようにしている。
 「中心課題」にまとめていくには,これまでの体験や観察の中で出てきたキーワードが手がかりになる。

(4)中心課題に対する自分の考えをもつ
 中心課題ができたら,もう一度自分の課題をふりかえり,全体の課題に対する考えを出すようにする。
 考えがはっきりもてたら,追究していく学習計画を立てるようにしている。学習計画を立てるとき,場合によってはサンプルのようなものも提示して,活動の見通しが立ちやすいようにしている。
3 解決力(課題を解決する力)をつける
(1)ねらいのための活動になるように
 課題に対して自分の考えをもった子どもは,追究を始める。ここでは,ねらいのために活動をおくようにしている。活動自体がねらいになると,活動さえできれば授業が成立したようになってしまう。
 ねらいのための活動には,さまざまなものがあり,それを組み合わせながら,ねらいに迫っていくようにしている。

(2)体験を通して調べる
 追究する活動として,本や資料で調べるということも多い。インターネットで手に入れた資料をそのまま使ってしまうということもある。
 子どもたちには,本や資料を通して追究するだけでなく,実際に見てみる,実際にやってみることによっても追究できるのだ,ということがわかるようにしている。実際にやってみることによって追究すると,発表も説得力をもつものになる。

(3)交流を大切にする
 調べている途中で,いろいろなパターンの交流を行っている。互いの共通点を見つける交流や,違いを認める交流,同じテーマどうしの交流,違うテーマがクロスする交流など,さまざまな交流がある。
 日常的に意見を交流することによって,自分の考えを確かなものにしていきたいと考えている。
4 活用力(学んだことを生かす力)をつける
(1)学んだことを生かす
 学んできたことを生かして,自分でどんなことができるのかを考えるようにしている。学んだことをそのまま発表して終わるのではなく,それを活用して新しいことや深まったことができないか考えるのである。
 学んだことを生かして,活動を楽しむというのも,学んだことを生かすことになる。また,学んだ視点を違う学習の視点として生かすというのも,学んだことを生かすことになる。

(2)社会に生かす
 学んだことを社会に生かす方法にも,社会に対して発表することや,知ってもらうこと,アピールすることなど,さまざまなものがある。これらをまとめて,社会に生かしている,と考えている。
 また,地域の人々を対象に生かしていくだけでなく,地域に来られる人も対象にすることができる。

(3)組み合わせて活用する
 学年や単元によっては,学んだことを生かすだけのこともある。また,社会に生かすだけのこともある。しかし,場合によっては,学んだことを生かして,さらに社会に生かすこともできる。ねらいに合わせて,これらの活動を組み合わせるようにしている。
 
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